第81章―20
さて、伊達政宗首相から言質を取った鷹司(上里)美子の行動は急と言えた。
美子は、早速、皇后陛下の徳川千江や九条完子を唆した。
「完子ちゃん、千江、貴方達の祖父の北米共和国元大統領の徳川家康様に、更なる宇宙探査を進めましょう、という話しをしない」
「「えっ」」
3人しかいない場ということもあり、美子は完全に身分を無視した言葉遣いで徳川家の姉妹を唆して、姉妹は絶句することになった。
「何でお父様(の秀忠)ではないの」
「そもそも宇宙開発を言い出したのは、家康様でしょう。それにお父様よりもお祖父様の方が、おねだりをよく聞いてくれるでしょう」
「確かに」
完子と千江は、美子の言葉に肯きながら、言うことになった。
「どんな更なる宇宙探査を進めるかだけど、火星の植民地化を、何れはだけど、ローマ帝国は図るつもりのようよ。それを北米共和国というか、徳川家は座視していいの」
「それは癇に障るわね。特に祖父(の家康)にしてみれば」
美子の言葉に、完子は即答した。
実際問題として、徳川家の本来の行動原理は、更なる土地の獲得である。
(最もそれを言い出せば、北米共和国の有力家門の武田家等も同様としか言いようが無かった。
北米大陸に植民した多くの面々が、それこそ日本政府の意向を完全無視して、ひたすら自らの土地獲得を図り続けた、と言っても間違いでは無かった。
そして、広大な土地を獲得した結果、その土地開発の為には外国人年季奉公人が必要不可欠、と言う事態が起きてしまうことになり、その果てに、外国人年季奉公人を全面禁止しようとする日本本国に反発して、北米共和国が成立する事態にまで至ったのだ)
そして、完子も千江も、徳川家の人間として、そういったことを、それなりに理解している。
又、月には大気が無いのに対して、火星には大気があることを考えれば、植民地化を進めるのにどちらが容易か、といえば、火星という考えが浮かぶのも当然だった。
そういったことを考え合わせて行けば。
「宇宙開発は世界各国共同でやるべきだ、と私は考えるわ。ローマ帝国の暴走を、それとなく止めないと。二人は祖父に宇宙開発を共同で進めるべきだ、と働きかけて。私は日本政府に、そのように働きかけるわ。そして、千江はエウドキヤ女帝陛下に、それを内報するの」
美子は更なる唆しを行った。
「何で、私がエウドキヤ女帝に内報するの。確かに養母にはなるけど」
「下手にエウドキヤ女帝陛下を動かすようなことをしたら、却ってエウドキヤ女帝陛下はへそを曲げるからよ。内報して、エウドキヤ女帝が自分から動くように促すの」
「確かに、それが賢明かも」
美子の言葉に、姉妹は更にのせられた。
「そうすれば、順当に各国共同での宇宙開発が進むと考えるけど、どうかしら」
「中々良い考えだと考えるけど。本当に美子ちゃんは、火星に住みたいの」
美子の言葉に、完子は賛同しつつ、反問した。
「うーん、無理だと考えるわ。少なくとも100年以内には。だから、私が火星に住むことは無いわね。というか、私としては、遠い将来でも、人類が太陽系内では地球以外で生活することは無い、と考えるわ」
「何で、そう考えるの」
「どう考えても、お金がかかり過ぎるモノ。宇宙や(太陽系内の)他の星で生活するのは」
「言われれば、そうね」
二人はやり取りをして、その横では千江が無言で肯いた。
この時代、宇宙や他の星で生活するという考えが出つつあったが、実行するとなると、お金の問題を無視する訳には行かない。
そして、美子が考える限り、宇宙や他の星で生活するとなると様々なお金、費用が多額に掛かる。
だから、遠い将来でも無理ではないか、と美子は考えざるを得なかったのだ。
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