表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1660/1800

第81章―15

 次に北米共和国だが。


「父の目が黒い内に、月面に人類がたどり着ければ、と考えていたが、どうやら難しそうだな」

「御意」

 徳川秀忠大統領と大久保忠隣国務長官は話し合っていた。


「宇宙開発のそもそもの発端を考えれば、亡くなられる前に父上はそれを残念がるだろうか」

「いえ、儂の死後とはいえど本当のことになるとは、と逆に感嘆される気がします」

「確かにそうだな」

 二人の会話は更に進んだ。


 二人共に、宇宙開発が始まった真の理由を知っている。

 最初はキューバ等に日本が戦略爆撃機も展開できる大規模飛行場を造ったことから、北米共和国にとって重大な国防上の脅威であるとして、その対抗策として大陸間弾道弾を開発しよう、更にはその欺まん策として、宇宙開発、月面への人類到達等が掲げられたのだ。


 だが、その話を聞きつけた日本やローマ帝国が共同での宇宙開発を言い出し、更にその理由として、自分の縁談、結婚に伴う贈り物であると言い張ったことから、今のような状況が生み出されたのだ。


「ところで、父上の病状はどうなのだ」

「(家康)殿自身は、自分の病気は軽い寄生虫病だと言い張って、自分で調合した虫下しばかり呑まれていますが、主治医の片山宗哲の診断によれば、恐らく胃ガンなのでは、とのことです。ただ、精密検査を拒まれるので、精確な診断ができないとのことです」

「精密検査をして、胃ガンと分かって、その手術をすれば、まだ延命できるのだろう。何故に父上は精密検査を拒まれるのだ」

「そもそも酷い医者嫌いですし、それに片山宗哲に言わせれば、物凄く手術を嫌っておられるとのこと。もう70歳過ぎまで生きて来た。それに孫娘が、日本の帝の皇后陛下に立后された。これ以上、手術を受けてまで長生きする必要はない、とまで仰せのようです」

「そうか」

 二人の会話は少し逸れて進んだ。


 実際、この頃の家康の病状はその通りだった。

 ある程度は止むを得ないことだったが、(この世界の)家康は、それこそ北米大陸の植民地開発に若い頃から駆け回ることになって、そのためにロクな医師がいない状況で育つことになった。

 そのために自分の身体は自分で治すしかない、として現代で言えば医療オタクになり、自分で自分の身体を自己診断して、自分で生薬を調合して、自分に投与する程になった。

 その反動も相まって、自分の身体は自分が最もよく分かっている、として酷い医者嫌いになったのだ。

 更に言えば、基本的に自分で自分の身体を手術することはできない、だから、酷く手術も嫌うということになったのだ。


 孫娘の完子と千江から贈られた隼2羽を伴にして、父は未だに趣味の鷹狩りを何とか楽しめるようだが、今の状況からすれば、後1年も生きられまい。

 せめて、千江が妊娠していれば、曾孫が親王になるのを見届けなくていいのですか、と父に言えるのだが、千江は未だに懐妊の気配が無い。

 最も今上(後水尾天皇)陛下が千江を気遣って、千江が18歳になる今年まで閨を共にしなかったのだから、ある程度は仕方がない。


(噂では、千江が真の皇后陛下になるのを、鷹司(上里)美子が妨害したということになっているが、千江自身が否定の手紙を書き、更には肉声で、直に言ってきた。

 そんなことはありません、むしろ、美子は今上(後水尾天皇)陛下に、速やかに私を真の皇后陛下にすべき、と言上したが、今上(後水尾天皇)陛下が、18歳になるまでは、と言ったとのことだ)


 そんな他所事にまで、秀忠は想いを馳せる一方、改めて考えた。

 月に加えて、金星や火星も徐々に分かりつつある。

 他の天体についての探査は、どのように進んでいくのだろうか。

 日本は無人探査機を、他の天体に送るのだろうか。

 この世界で片山宗哲が家康の主治医になるか、というと難しいですが、そこは物語ということで、緩く見て下さい。


  ご感想等をお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 美子さんの冤罪の誤解が解けた事。 (史実世界に比べれば)片山宗哲医師が酷い目に遭っていない事。 [気になる点] それにしても、史実世界での家康さんの片山宗哲医師への対応は酷すぎる。 [一…
[良い点]  家康さんの医者嫌いは史実でも30代に背中が腫れ上がり死を覚悟した“瘧”を鍼灸だけでなんとかしたぐらいだから皇軍世界でもさもありなん( ̄∀ ̄)医療技術が進歩した現代でも医者嫌いなお年寄りは…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ