第81章―14
そんな裏話の果てに、何とか1615年時点の宇宙開発に関するレポートはまとめられて、共同での宇宙開発に参画している日本、北米共和国、ローマ帝国等の各国政府に対して送られた。
さて、そのレポートを読んだ各国政府の反応だが、三大国以外の国にしてみれば、それなりに順調という判断が概ね下され、一部の国からは更に宇宙飛行士の志願者等が出るような反応が示された。
そして、三大国の反応だが、本来から言えば逆の順番になるのが相当だが、まずはローマ帝国政府の反応から描くならば。
「ふむ。気に食わぬな。金星の植民地化は、まず不可能、火星の植民地化にしても、遥かな未来になりそうか」
「正直に申し上げれば、まだ、サハラ砂漠以南のアフリカ大陸を、我が国の植民地にすることを図った方が、帝国には利益が上がる状況だと私は考えます」
「確かにその通りだな」
エウドキヤ女帝と藤堂高虎は、レポートを共に読み終わった後で、そんな会話を交わすことになった。
さて、サハラ砂漠以南のアフリカ大陸云々という話しが出て来た。
少しメタい話をすれば、大雑把に言ってだが、この世界のサハラ砂漠以南のアフリカ大陸は、(史実の)南アフリカ(共和国)の部分が日本の植民地になっていると言える状況だが、それ以外の部分は、いわゆる部族国家が分立していて、更にそれらは未だに未開国家と言われても仕方のない状況だったのだ。
勿論、全く文明の利器を、そういった国々が受け入れようとしていない訳ではないが、日本はサハラ砂漠以南のアフリカ大陸に殆ど興味を示さなかったし、北米共和国もアフリカ大陸からは年季奉公人が送り込まれるだけで満足していて、植民地化にしても(史実で言う)カナダ、アラスカが優先で、アフリカ大陸に手を出すようなことはしなかった。
更にいえば、「皇軍知識」からサハラ砂漠以南のアフリカ大陸は、黄熱病等の様々な熱帯伝染病の巣窟とみられがちだったのも、日本や北米共和国が余り興味を示さなかった要因だった。
(尚、南米大陸の奥地のアマゾン河流域等も熱帯伝染病の巣窟といった事情から、日本の植民地ではあったが、キチンとした統治体制が築かれているとは言い難いのが現実だった)
そんなこんなが相まって、様々な宗教の宣教師や各国の商人が、サハラ砂漠以南のアフリカ大陸各地を訪れることはあっても、植民地化が行われることはこれまで無かったのだ。
勿論、現地で自国出身の宣教師や商人がトラブルに巻き込まれれば、その本国が介入して解決を図ることは当然のようにあったが。
(特にローマ帝国は、場合によっては、陸軍の派遣まで辞さない等、積極的に介入しがちだった)
精々が治外法権等の特権を認めさせたり、賠償金を支払わせたりするくらいで、領土の割譲から植民地化までは求めないのが通例だった。
何しろ上述のように日本や北米共和国は、サハラ砂漠以南のアフリカ大陸に興味が無かったし、ローマ帝国にしても急激に拡大した領土内の様々な内政整備にほぼ手一杯だ。
それ以外の諸国、オスマン帝国や欧州各国に至っては、そんなどう見ても利益が挙がりそうにない植民地を造るくらいならば、国内産業の振興等を行った方が遥かにマシと言う現実に直面している。
だから、サハラ砂漠以南のアフリカ大陸は、悪く言えば、忘れ去られた土地になっていたのだ。
話がズレ過ぎたので、エウドキヤ女帝と藤堂高虎の会話場面に戻ると。
「仕方があるまい。朕の孫の頃には、火星がローマ帝国領になっていることを夢見るとするか」
「御意」
エウドキヤ女帝の言葉に応えながら、藤堂高虎は想った。
我が女帝陛下は、本気で星々までも、ローマ帝国領にすることを夢見ておられるのだ。
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