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第81章―5

 大きく場面が変わり、三大国を中心とする世界各国共同の宇宙開発の拠点であるトラック基地が主な舞台になります。


 最初は上里秀勝の観点になります。

 本当に頭が痛い気がしてくる。

 それがトラック基地の長官を務める上里秀勝のずっと続く悩みだった。

 何しろ極端に言えば、トラック基地の打ち上げ限度ギリギリの要求が続いているのだ。

 この悩みから解放されるために、トラック基地長官を辞任したいが、それなら後任者に何処の誰がなるのか、で途端に国際間の大問題が勃発する現実がある。

 その為に、どうにも秀勝はトラック基地長官を辞任できない現実に直面せざるを得なかった。

 それが、秀勝の頭痛を更に酷くさせていた。


 さて、何故にそんなことになるのか、というと。

 結局のところ、秀勝の様々な縁だった。

(度々、描いているが)秀勝の実母は、織田(三条)美子である。

 近衛前久が薨去したこともあり、(本人は完全否定するが)日本の政界における最大の黒幕、今上陛下の即位、譲位さえ思いのまま、本当は九尾の狐の顕現という噂が世界的に流れる女性である。

 そして、秀勝の養父は(完全隠居しているが)ローマ帝国の元大宰相の上里勝利になる。

 又、秀勝の妻の茶々の妹は小督であり、北米共和国大統領の徳川秀忠の妻なのだ。


 これだけ、世界の三大国の最上層部と縁がある秀勝だからこそ、秀勝が判断したことだ、ということで三大国等からの様々な宇宙開発等へのくちばしを、ある程度は抑えられるという現実があっては。

 秀勝の後任者に、誰もなりたがらない事態が起きるのも当然だった。


 更に言えば、秀勝の実際の年齢も、それを後押ししていた。

 秀勝は1562年の生まれであり、53歳である。

(この時代的には)そろそろ退職、隠居を秀勝が考え出してもおかしくはないが、そうは言っても、まだまだ若いと周囲から言われては、秀勝は反論しづらい。

 だから、1620年前後に行われる予定の、人類初の月面着陸を花道として退職、隠居したいと秀勝は言っているのだが。

 これはこれで、それまでの退職、隠居を秀勝が出来ない事態を引き起こしていた。


 それだけならば、秀勝の悩みも、それなりで済んだかもしれないが。

 宇宙開発について、世界の三大国の思惑が微妙に違うのも、秀勝の悩みを増していた。

(尚、それ以外の国々、オスマン帝国等も宇宙開発には一家言あるのだが、実際に宇宙開発に出している資金や人やモノの量からすれば、三大国が主導権を完全に握っていたのだ)


 まず、日本だが、宇宙に関する様々な知見を得るのを最優先に考えていた。

 だが、このことは完全に道楽、趣味だという他の国等からの批判を免れない話であった。

 何しろ、宇宙に関する知見を増したからといって、特に利益が得られる訳ではないからだ。


 次に、北米共和国だが、最初に宇宙開発に乗り出した頃の夢、人類の月面到達を最優先に考えていた。

 月面に赴いて、更に月の資源探査をしてはどうか。

 それが、北米共和国の主張だが。

 月に大気が無いのは、既に人類に知られていることと言っても過言ではなく。

 大気の無い月に赴いて、資源探査をする等、費用対効果が悪すぎる。

 それに月の領有権はどうするのだ、という批判が他国から巻き起こっていた。


 更に、ローマ帝国だが、この国が、ある意味では一番過激だった。

 それこそ、金星や火星を植民地化すべきだ、その為に宇宙開発を進めるべきだ、と訴えていた。

 金星や火星には大気がある。

(メタい話になるが、現代で言えば)テラフォーミングを行うことで、金星や火星を、人類の植民地にしていこう、とローマ帝国は訴えていた。


 この辺り、それこそ地球上ではサハラ砂漠以南のアフリカ大陸以外にはそれなりの国家等があり、ローマ帝国の領土拡大が頭打ちになっているという裏がある話でもあったが。

 三大国の思惑が違うということは、秀勝の悩みを深めたのだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 宇宙開発の方向性に、三大国の特性が現れ面白い。 長男は金満の余裕。 次男は中間。 三男坊が一番野心的。
[良い点]  「船頭多くして船 山に登る」な状況に頭を痛める秀勝さん(^皿^;)僕らの世界の宇宙開発が米ソの国威発揚で激しく競争してた頃はトントン拍子で進んでいたのがソ連の脱落とアメリカの宇宙への幻想…
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