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第78章―20

 もっとも欧州諸国の鉄道が、日本や日系諸国に見劣りするものになった原因は、もう一つあった。

 それは多額の軍事費の必要性だった。

 勿論、軍事費にかまけ過ぎては、往々にして経済成長を滞らせることになり、それこそ国を傾かせるのを、これまでの経験や日本や日系諸国から様々な学問を導入することで、欧州諸国政府の最上層部とて重々分かってはいたが。


 当時の欧州諸国は、ローマ帝国の直接、間接的な軍事力を傍で見せられ、軍事力の再編、強化が必須になっていたのだ。

 そして、その為にただでさえ乏しい予算を、軍事面に投入せざるを得なかった。


 欧州諸国において、何れは徴兵制の導入までも考えられたが、まずは外国人傭兵から自国民の志願兵を中心とする兵制への切り替えが、まずは行われる例が多発した。

 そして、兵であれば衣食住を完全保障する一方、数年間勤め上げれば、それなりの退職金を出すという形で兵の忠誠心を高めた。

 勿論、下士官以上になれば、それなり以上の月給支払いが当然になった。


(これは日本や北米共和国、更にはローマ帝国の軍制を横目で見て、自国の財政状況に合わせたものといってよかった。

 兵にまで給料は払いたくないが、兵の忠誠心を高める必要から、退職金という形が執られたのだ)


 そして、各種の兵器、装備の導入が急ピッチで進められることになった。

 1615年当時ともなれば、欧州諸国でもボルトアクション式小銃は第一線の歩兵火器から退きつつあり、(半)自動小銃が第一線の歩兵火器になりつつあった。

 勿論、火砲にしても、馬で牽引する火砲から、自動車で牽引する火砲が主流になりつつあり、一部では自走砲の導入まで図られた。

 そして、実験部隊と言って良かったが、戦車の導入までフランス等では行われ、それを見据えて、携帯式対戦車兵器(具体的には対戦車ロケット砲)まで、欧州諸国では導入する事態となった。


(尚、そういった兵器の多くが、北米共和国や日本からの導入だった。

 ローマ帝国にしても、自国の軍備が最優先であり、どうしても型落ち兵器しか欧州諸国には売る訳には行かない以上、欧州諸国は北米共和国や日本を頼ることになったのだ)


 更に海軍も強化されていった。

 というか、そちらの方が、明らかに国の内外に軍事力の強化をアピールできるという点で、陸軍よりも急激に進歩、強化された。


 例えば、スウェーデンでは、建造を依頼された日本でさえ、

「買ってもらえるなら、建造しますが」

と躊躇った程のヘリコプター巡洋艦のゴトランドを、1615年に艦隊旗艦として購入した。


 欧州諸国にしても、今や全金属製で完全に機関で動く軍艦の時代が到来しているのを、上から下まで熟知している。

 そして、戦艦の時代は終わり、ミサイル等を搭載した巡洋艦以下の水上艦艇や潜水艦等が海軍の主力艦艇と言える時代となっているのも。


 だから、日本や北米共和国からすれば、背伸びし過ぎでは、という艦艇を1点買いする例が多発することになった。

 そういった大型艦を自国海軍のシンボル、象徴として保有しようとしたのだ。

 日本や北米共和国は、身の丈に合わせた小艦艇複数の保有を勧めることが多かったが、それでは自国内外にアピールできない、と欧州諸国の多くが考えたのだ。


 こうなっては、欧州諸国の海軍に対応するために、ローマ帝国も海軍力強化を図らざるを得なくなる。

 そういったことも相まって、ローマ帝国の東進は滞らざるを得ず。

 更に日本や後金国、モンゴルは、ローマ帝国の東進が滞っている間に、対明帝国関係につき、大きく変えておくべきと考え、ユーラシア大陸横断鉄道建設でローマ帝国をあやしつつ、明帝国に対する軍事行動を準備して行動することになった。

 これで第78章を終えて、次話から第79章になり、対明帝国戦争準備に日本等が奔る話、章になります。


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― 新着の感想 ―
[良い点]  見栄えの良い艦種を自国のシンボルに選択した、と言っても猫も杓子もガチガチの大艦巨砲主義ってワケじゃないから二十世紀初頭の史実世界(列強と呼ばれる国々はともかく建造能力を持たぬ南米の国すら…
[良い点] 平時戦時問わず、実用上は、同型艦(又は類似の艦)が最低3隻、出来たら4隻無ければ、ローテーション組めないが、「展示用」なら1隻で十分。 [気になる点] 教育制度がどの程度進んでいるか気にな…
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