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第78章―17

 さて、渋々ジェームズ1世が、旧カトリック教会領をカトリック教会に返還した後だが、改めて有力なカトリック信徒のスコットランド貴族等に、こういった土地の殆どが改めてカトリック教会から、カトリック信仰を維持する限りという前提条件を付けて、寄進される事態が起きた。

 この為に、スコットランドではカトリック信仰の貴族が有力化する事態が起きた。


 この事態に対して、イングランドを中心に、英国国教徒を始めとするプロテスタント信徒が反感を覚えることとなり、(いわゆる)イギリス国内では宗派対立が激化する事態が起きた。

(いわゆる、という枕詞が付く理由だが、細かいことを言えば、この当時にイギリスという国は存在しなかったからである。

 史実同様にこの世界でも、イングランドとスコットランドの統合は、ジェームズ1世が戴冠したとはいえどできておらず、スコットランドはイングランド等とは別の国で、イギリスは一つの国では無かった)


 更に言えば、この当時のイングランドでは、史実同様に英国国教徒やカトリック信徒以外に、ピューリタンもそれなり以上に勢力を持っており、三つ巴の争いが起きることになった。

 ジェームズ1世は、ロバート・セシルらを重用してこの争いを鎮めようとしたが、ローマ教皇庁やローマ帝国は、カトリック教会領の一件から、ジェームズ1世らに対して冷たい態度を執り、流石に直接的な陰謀等を行うことは無かったが、イギリス国内の宗派対立を抑えようとはしなかったので、イギリスは、この宗派対立から来る国内の混乱に長らく苦しむことになった。


 さて、国を変えて、スペインに移る。

 1615年当時、スペインはフェリペ3世が統治していた。

 日本に留学して、政治経済等を学んだフアン・デ・メンドーサ・イ・ルナ侯爵が、それこそ革命に近い急進的な政治経済改革を宰相として断行した結果、二院制の国会を設置して、立法や予算等の権限が国会にある程度は認められて、日本等からは立憲君主制の国家と言えると見られるようになっていた。

 又、フランスやドイツと同様に教会領の寄進があったことから、王権の強化にも成功していた。


(細かく言うと、それこそ当時のフランスと同様に、市民にも国会議員の選挙権や被選挙権が認められるようになったとはいえ、その庶民院(日本で言えば衆議院)の有資格者は、極めて高額な納税者にまだまだ限られているのが、スペインの現状だった。


 これは、フアン・デ・メンドーサ・イ・ルナ侯爵が、日本のような普通選挙制導入は、祖国にはまだまだ早いという現実論から採られたものであり、フランスと同様に徐々に普通選挙に近いモノになっていくのだが、それはもう少し先、具体的には1630年代に入って、フェリペ4世の統治下、オリバーレス伯爵の大改革以降の話で、本編では語られない話になる)


 そして、残る欧州の国と言えば、ポルトガルになるが。

 この当時のポルトガルは女王カタリナが1614年に崩御し、その息子の一人であるテオドシオ2世が国王に即位していた。

 ポルトガルも、対日戦争で大打撃を受けたことから、スペインと同様に王国最上層部は国政改革が急務であることを身にしみて感じるようになっており、日本や日系諸国に留学生を送り込んだり、逆に人材を招いたりして、コルテス(身分制議会)を国会に改編する等の様々な国政改革を断行した。

 

 この国も、又、カトリック教会領の多くの寄進を国王が受けたことから、王権の強化に結果的に成功するようになった国の一つになった。

 とはいえ、ポルトガル自体の人口の少なさはどうにもならないことで、欧州内でさえもポルトガルは小国の地位に甘んじざるを得ないのが現実だった。 

 これで、欧州各国の1615年頃の現状説明を終えて、後3話は欧州を中心とする全体的な話で、それで、第78章を終えます。


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― 新着の感想 ―
[良い点] なんとかかんとか、ポルトガルも改革が進捗。 ポルトガルは元々小国であり、大航海時代の大成功がそもそも奇跡の僥倖。この程度でも上手くいっている方だと思いますね。(破綻した負動産の状況からは恢…
[良い点]  なかなか面妖な状態のイングランド(・Д・)史実のジェームズ1世まわりもシェイクスピア好みの周囲がバタバタ死にまくる奇々怪々ながらこちらも負けて無さそーで気楽な外野視点では非常におもちろい…
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