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第78章―6

 だが、そこまでの苦汁をエウドキヤ女帝が飲んだことから、1615年時点で、モスクワからバルト海や白海へと、大よそ排水量5000トン以下ではあったが、外洋船が運航可能という状況になっていたのだ。

 更に言えば、このことは北欧諸国に、後述するが甚大な影響を及ぼしもしたのだ。


 その前にローマ帝国の現状を東方から整理して述べるならば、1615年時点でシベリアの探査はほぼ完了しており、順調にシベリアの植民地化も進んでいた。

 だが、その一方で、後金国やモンゴル帝国の復興と言う事態から、(現代の地理名に準じて述べるならば、沿海州や満洲、モンゴルから中央アジア一帯への侵出を、表面上はローマ帝国は諦めざるを得ない事態が引き起こされていた。


(尚、表面上はという枕詞が付く由縁だが、ローマ帝国としては、中央アジアや沿海州等への侵出を完全に諦めてはいなかったからだ。

 後金国やモンゴル帝国に少しでも隙があれば、南進して植民地化等をローマ帝国は図るつもりだった。

 だが、欧州方面の情勢もあって、ローマ帝国の東方侵出は止まらざるを得なかった)


 そして、ローマ帝国の勢力が東方に近づく程、日本からの様々な脅威を、ローマ帝国政府は痛感せざるを得なかった。

 本音から言えば、不凍港であるペトロパブロフスク=カムチャッキーの開発にしても、軍民共用という形の港にローマ帝国政府はしたかった。

 だが、日本政府から、そのようなことをしたら、それは日本に対する宣戦布告と見なす、という厳重な警告を受けることになり、北米共和国でさえ、日本の警告に寄り添ったことから、ペトロパブロフスク=カムチャッキーは、完全な民間港として整備されることになったのだ。


 又、シベリアの開発にしても、皮肉なことに日本及びその同盟国との協調は必要不可欠だった。

 何しろ北極海航路を主軸にして、更に北極海に流れ込む河川、レナ河等の水路を利用して、更にそれを連結する連水陸路を活用して、という方策をシベリア開発の主な開発経路として、ローマ帝国は行っていたのだが。

 この開発経路は、何とも皮肉なことに、シベリアの大地を北から南に開発するのには、極めて有効だったが、西から東に開発するのには、余り有効とは言い難かったのだ。


 それを補完するとなると、日本及びその同盟国といえる後金国やモンゴル帝国との協調が無いと、どうにもならないのが現実だった。


 更に言えば、ローマ帝国にとって、シベリアの大地は資源が隠れているやもしれない魅力の地ではあったが、実際に人が住むとなると極めて厳しい土地なのは否定できない話だった。


 だからこそローマ帝国としては、シベリアの大地の開発を進めるためにも、中央アジアやモンゴル、満洲や沿海州に食指を伸ばしたかったのだが、日本を背景にして、後金国やモンゴル帝国がそれらの土地を抑えてしまったことから、ローマ帝国としては侵出に困難を覚えざるを得なかった。


 勿論、単純に国力だけを比較すれば、ローマ帝国の国力は、モンゴル帝国と後金国が手を組んだ国力よりも圧倒的に強いといえる。

 だが、もし、その両国と紛争を起こせば、日本が出て来るし、更に日本と手を組んでいる、オスマン帝国等の太平洋条約機構諸国が黙っていない。

 

 ローマ帝国にも、フランスやポーランド=リトアニア共和国等の欧州条約機構諸国が同盟国としているが、太平洋条約機構諸国と戦うとなると、明らかに劣勢になる。


 更にバルト海沿岸を始めとする欧州の情勢を考えれば、ローマ帝国としては、日本及びその同盟国と協調してのシベリア開発を行うしかない、と判断するしか無かった。

 そうしたことから、ユーラシア大陸横断鉄道建設が行われることになった。 

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[良い点] モンゴルの軛を永久に除去する為のシベリア侵出だが、結果的にモンゴル帝国の復活を招き、モンゴル帝国らと協調しなければシベリア開発が順調に進まない。 本末転倒だが、人間万事塞翁が馬、結果オーラ…
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