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第78章―5

 ネヴァ河口を大規模に開発して、ペトログラードを建設しよう、というのは本当に難事だった。

 何しろ河口部である以上、ペトログラードを建設する予定地内に沼沢地が当たり前のようにあるのだ。

 そして、沼沢地を看過して都市を建設するようなことをしては、色々な意味で禍のタネだ。


 それこそ沼沢地は、様々な種類の蚊を始めとする害虫が棲みつき、伝染病発生の温床になりやすいのだ。

 又、建設された都市で、本来的にはあってはならないことだが、様々な災害(火事や洪水等)が起きた際に住民が避難活動を行う際、沼沢地は障害物になって、住民の命を奪う等の事態が起きる。

 

 だから、沼沢地の干拓や排水等を積極的に行った上で、ペトログラードは建設されたが。

 その為に必要な費用や様々な資材が大量になるのは、どうにもならないことだった。

(その為に、ユーラシア大陸横断鉄道建設について、ローマ帝国としては不本意ながら、日本(及びそれに味方する周辺諸国)の要求を受け入れざるを得ない事態が起きた。

 下手に要求を断っては、ユーラシア大陸横断鉄道建設が遅れ、周辺諸国との関係悪化と言う事態が起きることまで、深読みと言えば深読みながら、ローマ帝国政府上層部は考えざるを得なかったのだ)


 他にも様々な問題が同時並行的に起きた。

 事前に羽柴秀頼らが、エウドキヤ女帝に対して、一部は警告を発していたことだが。

 

 本来からすれば、ローマ帝国の重心がエジプトやバルカン半島に寄っている以上、黒海からモスクワへと北に向かって運河等の建設を行った上で、そこからモスクワからバルト海等へと運河等の建設が行われるべきだったのに、エウドキヤ女帝の主張から、モスクワからバルト海等への運河等の建設が優先される事態となったのだ。


 このためにペトログラードの建設という事態が起きて、それにバルト海沿岸の諸国、スウェーデンやポーランド=リトアニア共和国等も連鎖反応的な対応を、軍事や民生等の観点から行うことになった。

 そうなると、ローマ帝国側も軍事や民生等の面で対応策を講じざるを得ない。

 

 このために、更にペトログラードの建設等の為に様々な費用、人員、資材が必要になるという事態が起きてしまったのだ。

 勿論、早いか遅いかの違いだけで、何れは必要になったことだ、という見方をする人もいるが。

 そうは言っても、この時に必要不可欠ということになって、出費等が強いられてしまった。

 ローマ帝国が、シベリア探査から植民地化を行った際に、軍事面に中々費用等を回すことができなかった一因がここにある。


 エウドキヤ女帝の本来の想いからすれば、「タタールの軛」を未来永劫に亘って断つために、シベリアの植民地化を進める一方で、中央アジアの植民地化を進めたかった。

 更にでき得るならば、インド亜大陸までもローマ帝国軍を進撃させて、ローマ帝国復興戦争において画竜点睛を欠く結果を引き起こす一因となったムガール帝国を攻め滅ぼすことはできないまでも、一大打撃を加えたい、とまでも考えていた。


 だが、リンダン・ハーンの中央アジア方面への侵出があり、これを後金国やオスマン帝国、更には日本までも裏から支援することで、モンゴル帝国が復興するという事態が起きたのだ。


 ローマ帝国としては、モンゴル帝国復興を阻止するために様々な軍事的行動を執りたかったが、ペトログラードの建設から起きた事態への様々な対応を、どうしても優先せねばならなかった。 


 エウドキヤ女帝は、何度か癇癪を爆発させはするものの、ユーラシア大陸横断鉄道建設を行わねばならないという国際情勢も相まって、最終的にはモンゴル帝国復興を事実上は看過せざるを得ない現実を受け入れざるを得なかった。

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[良い点]  タタールの軛への忌避感から東征を指向していたローマの歩みが読んでいた読者の予想ほど激しく無かった裏の理由が「モスクワからバルト海へ西へ向かう開発にかなりの国富を注ぎ込んでいた」せいだと開…
[良い点] 癇癪を起こしつつも大略は合理的な女帝。 [一言] 銀英伝のラインハルト帝よりも女帝の方が合理的。ラインハルト帝は無用の戦乱起こしすぎ。
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