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第75章―16

 そんなてん末の末に1611年5月28日に、日本の皇太子の政宮殿下と、北米共和国大統領の次女にして、ローマ帝国のエウドキヤ女帝御夫妻の養女になる徳川千江の御成婚の儀が執り行われた。


(尚、御成婚の儀が、1611年5月28日に決まった理由だが、土曜日であり、又、六曜でいえば友引というのが最終的に決め手になった、と特に日本国内では広まることになった。

 土曜日ならば、臨時の祝日にすることで、多くの人が次の日が日曜日ということから、連休を満喫することになる。

 又、友引なので、目出度いことが続く予感を引き起こすことになり、そういった点でも縁起が良い、という主張が、噂レベルだが為されることになったのだ。

 尚、この辺りの真実だが、世界各国の参列者の様々な事情を勘案した結果、という辺りが、本当のところで、特に六曜に関しては考慮されてはいなかったらしい)


 そして、日本の皇太子殿下の御成婚式が、同期軌道に展開している放送(通信)衛星を活用することによって、全世界へのテレビ中継に成功したのは極めて喜ばしい出来事だった。

 それこそ、日本の皇太子殿下の御成婚式に続いて、全世界へのテレビ中継成功が、世界中の多くの国や地域で第二のトップニュースになる事態が起きた程だった。

 文字通りに世界中の多くの人が、時代的な背景から街頭テレビや、結果的にはニュース映画で見ざるを得ない人もそれなりどころではなくいたが、日本の皇太子殿下の御成婚式を見ることが出来たのだ。


(尚、メタい話をすれば。

 この世界では、1630年になるまで、世界で最も多くの人が同時に見た映像記録を、この日本の皇太子殿下の御成婚式は保持することになる)


 そんな事態が、世界中で起きることになったが、トラックを中心とする宇宙開発の現場からすれば、日本の皇太子殿下の御成婚式を、放送(通信)衛星を用いて、世界中にテレビ中継するという大イベントが成功裏に終わったという以外の何物でもなかった。


 そして、この日までの様々な心身の疲労を実際には癒すためもあって、例えばトラックにおいては、5月29日から1週間の特別休暇が、全職員に対して基本的に与えられる事態が起きた。

(尚、実際には当直任務があるので、完全に1週間の特別休暇を謳歌出来た者は全く居なかった。

 世知辛い話だが、何がしかの当直任務を、それこそ下は末端の職員から上は上里秀勝長官に至るまでの全職員が、交代で務めざるを得なかったのだ)


 更に特別休暇が終わった後、上里秀勝長官は改めて、世界各国の協力の上で、人類初の宇宙飛行計画の推進を行おうとすることになっていた。

 だが、結果的に半年余りに亘って、宇宙開発計画が狂ったことは、様々な影響を引き起こしていた。


「どうしたものかな」

「思わぬ人が、宇宙飛行士として名乗りを上げることになりましたな」

「更に言えば、日本人、細かく言えばカリフォルニア自治領の出身ではありますが、北米共和国大統領とも縁があるとは、無下には断りにくい人ですな」

 そんな会話を、上里秀勝長官以下の面々は交わすことになった。


 更には、ウィリアム・バフィンやヤコブ・ルメールといった面々にしてみれば、日本で言えば、鳶に油揚げをさらわれる、という想いがする事態が引き起こされることになった。


「本当に後から来た、それも女性が宇宙飛行士に名乗りを上げるとは」

「だが、実際に極めて優秀な空軍士官らしい。だからこそ、日本も提案し、更には北米共和国も大統領の縁、最も直には逢ったことの無い身内とはいえ、賛同することになったとか」

「何と言えば良いのか、本当に悩む話だな」

 ウィリアム・バフィンとヤコブ・ルメールは、そんな会話を交わした。

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