第75章―12
「確かに全くアリエナイとして、笑い飛ばす訳にもいかない話だ、と織田(三条)美子と鷹司(上里)美子が実の祖母と孫娘という話については考えるが。真実はそうだ、と言って騒いでも、日本政府に否定されれば終わりの話だな」
「全くその通りだな。それこそサタン(魔王)やデミウルゴス(造物主)の化身という噂があって、日本の天皇陛下の指名権を持つという噂が追加である織田(三条)美子だからな。それこそ様々な書類を造って真実を覆い隠すことくらい、極めて容易なことだ。日本政府もその書類内容が真実だと認めるだろう」
ガリレオとケプラーの織田(三条)美子と鷹司(上里)美子の関係の話は、それで一段落した。
「無責任な噂話は、その程度で終えるとして、実際のところ、放送(通信)衛星の製造、及び実際の打ち上げ計画はどんな状況なのだろうな。我々が様々な観測資料に基づいて、懸命に軌道計算等をしても、実際に放送(通信)衛星が製造されて、それが計算通りに軌道投入されないようでは、どうにもならん」
「そのことだが」
ガリレオの問いかけに、ケプラーは周囲に自分達の会話に耳を澄ませているような人物がいないことをざっと確認した上で、口を開かざるを得なかった。
ここは酒場であり、下手にひそひそ話をしては、却って周囲が耳を澄ませてしまう。
だからこそ、何でもないことのように普通の声で話す方が、周囲の耳目を集めないのだが。
そうはいっても、やや機密に入る話という意識がある以上、警戒して話さざるを得なかったのだ。
「事前に準備される放送(通信)衛星だが、日本製が3つ、北米共和国製が2つ、ローマ帝国製が1つというのが予定らしい。更には日本製3つが主チームを造り、北米共和国製とローマ帝国製の合計3つが予備チームを造るらしい」
「ほう。何だかんだ言っても、日本製が主となるのか」
二人の会話は弾んだ。
「仕方なかろう。何だかんだ言っても、日本の製造技術が世界最先端を歩んでいるのは否定できない。勿論、北米共和国やローマ帝国も日進月歩で、日本に追いつこうとしているが」
「確かにな。これまでの様々な積み重ねからすれば、日本に追いつくのは難しいな」
二人の見解は一致していた。
「それにどうしても機械の相性というのがあるからな。そんなことはない、と否定する者もそれなりにいるが、どうのこうの言っても、日本製は日本製同士と、北米共和国製は北米共和国製同士と相性が良いのは否定できない気がしてならない。そうしたことからすれば、日本製の放送(通信)衛星だけの主チームができるのは、祖国の北米共和国の力不足を認めるようで悔しいが、仕方ない話だ」
「それを言えば、ローマ帝国人の自分も同じだな。ま、ビールを飲んで、憂さを晴らすか」
「そうだな」
二人は、更にビールを痛飲して、2時間余りを過ごし、更に余談を交わした末。
「本当にロケットを使って、放送(通信)衛星を打ち上げて、更に世界規模でのテレビ放送が行われることになるのだよな」
「その筈だ」
お互いに微妙に呂律が回っていない会話をして、酒場から出る羽目になっていた。
お互いにもっと飲みたい気分だが、これ以上に飲んではダメだ、というギリギリの理性がお互いに働いたことから、酒場を出ていたのだ。
「本当に神の御業か、神を冒涜する所業だな。子どもの頃には考えもしないことだった」
「全くだ。ローマ教皇庁がこんな事態を容認するとはな。くたばれ、天動説」
「そういえば、地動説を言ったら、子どもの頃は異端審問で火刑だったな」
「生きている内に、こうなるとは思わなかったぞ」
完全に酔ってしまい、二人は千鳥足で、各々の自宅への家路をたどる羽目に陥っていた。
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