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第75章―6

 そして、この北極点到達、南極点到達を新聞等で見聞きしたウィリアム・バフィンやヤコブ・ルメールは共に10代の多感な年頃だったこともあり、自分達も後を追って、探検家の路を歩みたいと一時は考えたが、よくよく考えれば、既に初到達が果たされている以上、今更、北極点や南極点を目指すのもどうか、という考えに至った。


 そうした中で、宇宙開発が徐々に本格化したことから、二人は自らの進路を宇宙飛行士に切り替えて、宇宙を何れは探検したいと考えるようになったのだ。

 そのための一環として、二人は軍人になり、更に軍内部から宇宙飛行士の志願者が募られた際に、自ら志願して、幸いにも宇宙飛行士に選ばれることにまで至ったのだ。


(何故に軍人を目指したのか、というと、この世界では北極点到達も、南極点到達も軍人が果たしたという現実が強かった。

 更に言えば、宇宙開発はこれまでも述べてきたが、軍とのかかわりが強く、そうしたことからも宇宙飛行士を目指す若者は、軍人を経由する者がほとんどだったのだ)


 そして、折に触れて話し合ううちに、お互いに宇宙飛行士を目指した動機が同じであることに共感して、ウィリアム・バフィンとヤコブ・ルメールは友人になり、今ではトラックで勤務していた。

 更に言えば、1611年前半には行われる予定の人類初の宇宙飛行を行うのは自分だ、として競い合うライバルでもあったが。

 二人にしてみれば、いきなり1610年晩秋に、二人の意気込みが思い切り削がれる事態が起きた。


「日本の皇太子である政宮殿下と、北米共和国で大統領に再選された徳川秀忠殿の次女の徳川千江様の婚約が、日本の内大臣府から発表されました。尚、世界の三大国の友好関係を深める為に、徳川千江様はローマ帝国のエウドキヤ女帝御夫妻の養女となり、ローマ帝国の皇女として日本の皇太子妃になるとのことです」

 そんな新聞やラジオ等々の第一報の報道を聞いた際には二人は、

「これは、史上空前の世界規模の婚姻だな」

「将来の日本の天皇陛下の傍に立つ皇后陛下は、ローマ帝国の皇女殿下にして、北米共和国元大統領の娘だからな」

 そんな雑談を交わした程度だったのだが。


 それから急激に雲行きが怪しくなったといえる事態が立て続けに起きた。

「日本の皇太子殿下の御成婚式だが、放送衛星を使うことで、世界にテレビ中継放送ができないか、という声が挙がっているらしい」

「確かにテレビ中継に使える放送衛星を1611年中に打ち上げることになっていたが、それは1611年後半の予定で、人類初の有人宇宙飛行の方が先に行われる筈では」

「今更、予定変更とか無理な話では無いかな」

「更に言えば、1611年中は試験放送に止めて、商業放送となると1612年の予定では無かったか」

 第一報を聞いた数日後には、そんな会話を二人が交わすことになった。


 そして、更に数日後、第一報が流れて10日も経たない内に。

「えーっ、人類初の有人宇宙飛行は後回しで、放送衛星の開発、打ち上げが最優先だと」

「ああ、間違いない情報だ。上里秀勝長官直々にそういった指示を出したそうだ。開発部は完全に大混乱状態らしいぞ」

「そんな無茶苦茶な」

 二人はそんな会話を交わした後、物陰に移動して、周囲に聞かれないようにひそひそ話を始めた。


(尚、余談ながら、他の宇宙飛行士や技術者達も、似たような行動をしていた)


「上里秀勝長官にしても苦渋の決断らしい。何しろ、世界三大国の友好を深めるため、と言われては断る口実も難しい。更に言えば、徳川千江様は身内だから」

「えっ、そうだっけ」

「上里秀勝の妻の茶々様の妹、小督は徳川秀忠大統領の妻だろうが」

 二人はそんな会話を交わすことになった。 

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― 新着の感想 ―
[良い点] やはり世紀の婚礼の盛儀の衛星中継>有人宇宙飛行 だと思いますが。 しかしながら、ウィリアム・バフィンさんとヤコブ・ルメールさん、気の毒。とは言っても史実世界よりは・・・。 [一言] 宇宙…
[良い点]  ここで“世紀の婚姻”が世界初の有人宇宙飛行に波紋を与える展開(・Д・)あーそー言えば史実は有人宇宙飛行が優先で軍需より民需に価値が高い放送衛星は金持ったアメリカですら後回しだったもんなー…
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