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エピローグ(第12部)―1

 第12部のエピローグの始まりになります。

 いつの時代でも、女性にとってはおばあちゃん呼ばわりは若い頃には嫌な代物なのです。

「完子ちゃんも結婚するとは想わなかったな」

「何を他人事のように言っているの。私にしてみれば、色々な意味で貴方に煽られた結果よ」

 それこそ小学校低学年の頃からの幼馴染の親友ということもあって遠慮のない会話を、鷹司(上里)美子と九条(徳川)完子は1606年3月に鷹司邸において交わすことになっていた。


 美子の親友の徳川完子だが、昨年の6月に美子が結婚することになり、その際に美子の花嫁衣裳を自分が見たことから、自分も少しでも早く花嫁衣装を着たい、とそれこそ自らの婚約者の九条幸家等に懸命に訴えた結果として、1605年の9月末に無事に九条幸家と結婚式を挙げたのだ。


 完子の本音としては、それこそ少しでも早く夏の間には結婚式を挙げたい、と言ったのだが。

 夏の暑い盛りに結婚式等、自分達も参列者も汗みずくの結婚式になるからダメだと婚約者の幸家に完子は諭された結果、暑気が収まる9月末の結婚式で完子は妥協することになったのだ。


「ところで、輝子叔母様が私に、

『私のことは御姉様、とこれからは呼びなさい』

と言い出したのだけど、それが貴方の子どものせいだというのは本当なの」

「本当よ。私にまで、

『今日からは御姉様ですからね』

と言い渡しがあったわ」

 完子の少し声を潜めての問いかけに、美子も合わせるように少し声を潜めて答えた。


「一体、何があったの」

「私が口を滑らせたのが悪かったのだけど」

 完子の更なる問いかけに、美子は肩を落とすようにしながら言葉を継いで説明した。

(尚、本来はもっと長い説明になるのだが、適宜、省略している)


 輝子叔母様こと鷹司輝子は、言うまでもなく美子にしてみれば義母(夫の信尚の母)になる。

 だが、その一方で輝子は九条兼孝夫妻の養女になって鷹司信房と結婚しており、同様に九条兼孝夫妻の養女になって信尚と結婚した美子にしてみれば、義姉にもなるのだ。


 そして、先日、もうすぐ美子が子を産むということで舞い上がっていた信房が、

「いやあ、40歳で自分が御祖父様になるとはな。30代半ばで妻は御祖母様になる訳か」

と話をして、それを聞いた輝子が不機嫌になったことから、美子が、

「輝子母様は私の義姉上ですから、私の子からすれば伯母様ですね」

とフォローしたところ、輝子は機嫌を直したのだが、その後が悪かった。


 輝子が美子に対して、

「自分の言葉を守りなさい。これからは私を御姉様と呼ぶように」

と言い渡す事態が起きたのだ。

「分かりました」

 美子としても、自分が言い出した以上はそう言うしかない。


 更に輝子は九条家にまで行って事のてん末を話して、これまで自分のことを叔母様と呼んでいた九条幸家や完子にまで、自分のことは今後は御姉様と呼ぶように言い出したという事態になったのだ。

(実際に九条幸家は九条兼孝夫妻の実子であり、間違ってはいないのだが)


 美子からそういった事情を聴かされた完子は呆れかえって言った。

「確かに30歳代半ばで御祖母様と呼ばれたくないのは分かるけど、それに確かに筋論的には通るけど、美子ちゃんの子どもが混乱するわよ。だって、御祖父様の妻が伯母様なんて、おかしいじゃない」

「そうだけど、それを言ったら、私の実母の愛義姉さんにしたって、私の子は伯母様呼びになるのよ」

 そう美子に言われて、完子は上里家の家庭事情を改めて思い出した。


「ああ、もう日本の公家の家族関係は本当に面倒くさい。何でこんなに実の親子関係と養親子関係が複雑に入り乱れるのよ」

 本来は北米共和国人である完子は捨て台詞を吐いた。


 完子のその姿を見た美子は、改めて想った。

 本当に何でこんなややこしい家族関係になったのかな。

 でも、皆が幸せに暮らせればよいと私は割り切ろう。

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― 新着の感想 ―
[良い点] その気持ちは分かります。
[良い点]  物心ついた頃から学習院で学んでいても基本大陸ナイズドされてる完子さんには複雑怪奇に感じる公家社会のややこしい姻戚関係(^皿^;)しかしまだ年齢的にも立場的にもちゃんと筋が通ってるだけ良い…
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