第71章―1 1605年における宇宙開発の現状
新章の始まりになります。
1605年現在、色々と紆余曲折があった末に、日本と北米共和国、ローマ帝国の三国共同による宇宙開発の最大の中心地は、太平洋のトラック諸島に置かれることになっていた。
更に言えば、それ以外の(主に欧州)諸国も、この三国共同による宇宙開発に様々な協力を積極的に申し出る現状にあった。
これは、それこそ人類が月に赴くということに壮大な夢を諸国が覚えたということ、更に世界の三大国全てが協力していると言っても過言では無い大事業に自らも参画することで、三大国の好意を得ようと諸国の多くの政府首脳部も考えたということから起きた事態と言えた。
そのためもあって、それこそトラック諸島は、既に人種のるつぼと言っても過言では無い状況になっていた北米共和国の主な影響もあったが、日系の黄色人種が中心とは言え、様々な人種、更には混血の入り混じった地球の人類の縮図と言える場所になっていた。
さて、ガリレオ=ガリレイ(以下、「ガリレオ」と略す)は、ローマ帝国から科学技術者の一人としてこの地に派遣されており、様々な技術を学びつつ、実務に携わっていた。
何れはこの地で建造されて、打ち上げられたロケットが宇宙へ、更には月へ、他の惑星へと赴くのだろう、と夢見る想いがしていたが、それが遥かな道程であることも分かりつつあった。
だが、その一方でこんな時代が来るとは、という様々な想いがしてならない日々を送っていた。
「貴方、この地には本当に肌の色が違う人が集っているのね。子どもらは気にせずに無邪気に遊んでいるけど、自分はついていけないわ」
「自分も同じだよ。更に言えば、北米共和国や日本から来た人達は、本当に一括りにはできない。欧州諸国から来た人は、ほぼ白人ばかりと言っても間違いないけど。日本人は黄色人種がほとんどと言っても、それなりに異人種の血が混じっている人がいるし、それに植民地が世界中に広がっていると言っても過言では無いから、そこから来る人達もいるしな。それが、北米共和国になると更に分からなくなるからな」
この地に来て数日が経って落ち着いた頃に、愛妻のマリナの問いかけに、自分はそう答えたが。
その答えは、益々正しくなっている一方だ。
北米共和国から来た面々は、本当に白人も黒人も、更に黄色人種もいて、更に混血している人も稀ではない。
自分が会った中には、父が白人と日本人の混血で、母が黒人と日本人の混血で、自分は3つの人種の混血です、と言った人までいたのだ。
更に北米共和国では、そういった混血だからと言って、公然と差別されることはないとのことだ。
(勿論、北米共和国内で人種や混血に対する差別、偏見が全く無い訳ではない。
だが、少なくとも法律上は平等が保障され、公的機関も差別禁止で動いているのだ)
自分の知る限り、欧州諸国では考えられないことだ。
最も北米共和国の場合、最初の大統領の徳川家康が多数の異人種の愛人を抱えたのも大きいのだろうが、とひねくれた考えをしてもみるが。
何しろ黒人の愛人から生まれた息子(秀康)や、白人の愛人から生まれた娘(督子)がいて、そういった複数の愛人やその子らと同居し大統領として、北米共和国を徳川家康は統治したとか。
更にそれが国民の支持を集めて、最初の北米共和国の大統領選挙で徳川家康は勝利したとか、
本当に欧州諸国では考えられない話なのは間違いない。
ともかく、そんなことを考えながら、ガリレオはトラック諸島で働いていた。
その一方で、年中夏と言っても全く過言では無い、この土地の気候にはガリレオは悩むことにもなっていた。
何しろ、トラック諸島はほぼ赤道直下にあるのだ。
宇宙開発のためとはいえ、耐えかねる事態だった。
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