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第70章―25

 結局、羽柴秀頼は自分の考えをまとめるだけで、一日を掛けることになった。

 そして、エウドキヤ女帝陛下に請願を行った翌日、羽柴秀頼は腹心と言える部下の面々を集めて、今後のこと等について、指示を行うことになった。

 尚、腹心と呼ぶには若すぎるが、これまでの経緯から必然的に羽柴秀頼に随行することになっているフョードル・ゴドノフもその場に呼ばれることになった。


「女帝陛下に今後のことを相談したところ、次のような命令が下された。我々はそれに従う」

 その言葉を皮切りに、羽柴秀頼は今後の計画について、るる説明していった。

 ヴォルガ川の源流部からラドガ湖をつなぐ運河を建設することになったこと、更にラドガ湖からネヴァ川へ更にその河口に築かれる港町を介し、バルト海とモスクワを外洋船でつなげるようにするようにと女帝陛下から命令が下されたこと等、羽柴秀頼は諄々と説明していった。


 羽柴秀頼の腹心の部下のほとんどが、その内容に驚くことになった。

 そして、フョードル・ゴドノフも内容に驚いた一人になった。


「今度は北に赴いて、モスクワとバルト海をつなぐ運河等を築くことになるのか。本当に思わぬことになったものだ」

 それがフョードル・ゴドノフの脳裏に最初に浮かんだ考えになった。

 何れは行う工事の一つ、と羽柴秀頼から聞かされてはいたが、まさかモスクワ運河建設完了後すぐに行う工事になるとは、本当に思いも寄らないことだった。


 だが、その後の羽柴秀頼なりに推測したエウドキヤ女帝陛下の考えを聞く内に、フョードル・ゴドノフは胸の高鳴りを覚えずにはいられなくなった。

 モスクワとバルト海をつなぐ。

 更にその先には北極海等を介して、世界とモスクワを外洋船でつなぐことになる。

 余りに壮大で不可能な夢、とかつては言われただろうことだが、今の自分達なら可能なことだ。

 何としても速やかに果たしたい夢に、自分には思われてならない。


 そして、更にフョードル・ゴドノフの脳裏に浮かんだ想いがあった。

(厳密に言えば誤っているらしいが)キリスト教が世界に広まったのは、首座使徒であるペトロが布教活動に尽力して最期はローマて殉教したためだと聞いたことがある。

 エウドキヤ女帝陛下が、キリスト教、東方正教を世界に広めようとするならば、ネヴァ川河口に築かれる外洋を目指す港町に、それに相応しい名前、ペトロの名が必要だろう。


 そんな想いが、何時か溢れた末に口からもこぼれていた。

「ネヴァ川の河口に築かれる予定の港町ですが、首座使徒のペトロの名を冠したペトログラードにするのは如何でしょう。その後を考えると、極めて幸先の良い名前になるように考えますが」

「確かに良き考えに想われる。エウドキヤ女帝陛下に提言してみよう」

 フョードル・ゴドノフの言葉を聞いた羽柴秀頼は即答した。

(これは羽柴秀頼が東方正教徒なのも一因だった)


 実際に悪く無い考えとしか、言いようが無い話だった。

 ネヴァ川の河口に築かれる港町は、モスクワからすれば最初の外洋船の窓口になるのだ。

 そして、バルト海から北大西洋へ、更には北極海から北太平洋を望み、海路を介して遠いアジアの地に東方正教を広める窓口にもなるだろう。

 そうしたことを考える程、首座使徒であるペトロの名をネヴァ川河口に築かれる港町に付けるのは極めて良い話のようにしか考えられないことで、何時か羽柴秀頼の周囲の面々も賛同していた。


 そして、羽柴秀頼は腹心の部下と新たな運河建設計画をまとめた後で、ネヴァ川河口に築かれる港町をペトログラードと名付けたいことも併せて、エウドキヤ女帝陛下に上奏した。

 エウドキヤ女帝陛下は、これらのことを全て嘉納した上で推進することになったのだ。

 これで第70章を終えて、次話からこの世界の主に三国共同による宇宙開発の現状が語られる第71章になります。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ローマ帝国バルト海本格進出。 [気になる点] バルト海沿岸諸国の動向。スェーデン、ドイツ帝国、デンマークらが、本格的に日本帝国と同盟国になれば、ローマ帝国バルチック艦隊は、沿岸警備隊レベル…
[良い点] ペトログラードの誕生面白いですね。 [一言] 願わくは、この世界にレーニンとかいうテロリストが誕生して改名されませないように
[良い点]  (´⊙ω⊙`)うわ!“サンクトペテルブルク”でも“聖女帝都市(ロシア語読み)”でもなく読者の予想を軽く超えて来た“ペトログラード”爆誕!!そー言えばドイツ贔屓文化発生以前だからロシア風に…
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