表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1408/1800

第70章―18

 元農奴に国有化した貴族が保有していた農地を払い下げる。

 言うのは簡単だが、これは極めて頭の痛い問題である。

 何しろ多くの農奴が資産を持っていないと言っても過言では無く、従って農地の買い取りが困難な農奴がほとんどと言えたからだ。

 とはいえ、これまで耕していた農奴に単純に無償で分配という訳にもいかない。

 それなりの代償を払わせないと、土地を得た元農奴にしても有難みを感じないからだ。


(無料でもらえたモノと、それなりの代償を払って得たモノとどちらを大事にするか。

 それなりの代償を払って払って得たモノの方を大事にする人の方が多いのが現実です)


 他にも旧モスクワ大公国の領内では、農奴の逃散が相次いでいた結果、流民化した農奴がそれなりどころではない数でいるのだ。

 こういった流民の農奴を、独立自営農民に転換するのは必要不可欠で喫緊の課題といえる。

 そうしないと国庫の増収が図れないし、流民対策に税金を投入せざるを得ない事態に陥るからだ。


 更に頭が痛いのは、農地というのは手入れが必要不可欠であり、それこそ何年も放置したままでは、農地として無価値な荒地になりかねないことだった。

 勿論、現実には農地で常に農作物が栽培される訳では無く、休耕地にしたり、一時的な放牧地にしたりして土地を休めるのは当たり前にある話ではある。

 だが、そういった場合でも、その土地に何かあれば対応できるように、それなりに地主や農奴が看視しているのが常であり、実際に何か天災等があれば対策を講じねばならない。

 そうしたことをしないまま、何年も放置しては一から開墾するのとほぼ同じ事態になってしまう。


 そんな様々なことを考え合わせた末、国有化した農地については、現地で様々な調査を行い、現地に残っていた農奴に対して農地を優先して自作地として配分する一方で、人手不足と判断された農地については、流民になっている農奴に希望を聞いた上で入植地として斡旋し、3年程真面目に働いて納税を行えば、その代償としてその土地を自作地として認めるという方策を講じることを、ローマ帝国は基本的に行ってきていた。

 更に完全に荒廃した農地については、流民から開拓団を募り、その開拓団に物資等を支援して、再農地化を図るようなことも実施されていた。


 ローマ帝国内の農地については、そういった大改革が進みつつあるのを聞いて、羽柴秀頼はモスクワ運河に従事した労働者たちの今後のことを改めて考えねばならなかった。

 一部の技術者や管理業務を担う者(といっても数千人規模にはなりそうだが)を、新たなヴォルガ・ドン運河建設に連れて行くつもりで、それ以外の労働者等については賃金を払った後で、完全解雇するしかないと考えていたのだが。

 解雇した後のことが、自分の考えには抜けていたな。


 このモスクワ運河開削に従事した労働者の供給源は、主に二つだった。

 一つはモスクワ市民、細かく言えば下層の人々で、その日ぐらしに近い生活を送っていたのが、モスクワ運河建設の労働者募集の話を聞いて、生活の為に稼ごうと働いた者達だ。

 もう一つが、流民となっていた農奴で、ローマ帝国政府としても無為徒食させる訳にはいかず、大規模な運河開削工事に従事すれば、衣食住が保障されるし、賃金も払われるという事で駆り集めたのだ。


 モスクワ市民は小金が貯まっていて、モスクワに戻って、それなりに何とかするだろうが。

 農奴はそうはいくまい。

 エウドキヤ女帝陛下に、モスクワ運河開削に従事した農奴の今後について改めて上奏を行い、農地の分配について配慮をお願いすることにしよう。

 彼らはそういった配慮を受けられれば安堵するだろうし、良き農民、帝国の臣民になるだろう。

 ご感想等をお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ローマ帝国の国力、急増。専制国家の良い点のみ発揮中。 [気になる点] 小規模自作農がこれからの農業機械化に対応できるか?心配。
[良い点]  商工業がさほど発展していないローマ帝国においては土地から上がる農作物こそが税収の基盤、だからこそ混乱を最小限に収め可及的速やかに多くの自作農をひとり立ちさせるべく大車輪のローマ帝国の宮廷…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ