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第70章―9

 フョードル・ゴドゥノフは、更に思い起こした。


 ローマ帝国政府からモスクワ運河建設に協力を命ぜられて、母と共に羽柴秀頼の下に赴くように言われた時、恐らく母は羽柴秀頼の慰み者になるのだろう、と自分は内心で想ったし、母も内心でそうなるだろうと覚悟していたらしい。

 だが、実際には違った。


 それこそお嬢様育ちの母にとって、これまでのように何人もの侍女や従者にかしづかれた生活ではなく、身の回りのことは当然に自分でして、更にはまともな建物がなく、いわゆる天幕の中で寝起きするのが当たり前の生活がつらくなかった筈はない。

 それを言えば、自分も同様と言えた。


 だが、母と自分は、羽柴秀頼殿に近侍したこともあり、それなりに配慮された処遇を受けられた。

 移動する際には、自動車やハーフトラックを使うのが当たり前だった。

 食事にしても貧相極まりなく、白パンどころかパンではない代物、ジャガイモが主食ということが稀では無く、当たり前と言って良かったが、そんなことを言ったら、羽柴秀頼殿の食事も同じだった。

 それらを考え合わせれば、更に本来ならば、自分や母は修道院で幽閉生活を送らされてもおかしくないことからすれば、この生活は遥かに幸せと言えた。


 さて、自動車やハーフトラックだが、ローマ帝国内で造られたモノは少数で、日本や北米共和国から購入して、運び込まれたのが殆どと言えた。

 更に言えば、そちらの方が質が良く、悪路走行した際の故障等も少なかった。

 この時はモスクワ運河建設の調査段階だったので、そのようなモノが主力だったが、建設が本格化すると様々な土木作業用の機械、建設機械も建設現場に同様にローマ帝国の内外から運び込まれ、自分はそれに魅せられることになった。


 さて、何故に母と私が、羽柴秀頼殿の傍にいることになったか、というと。

 当初は当主や高位の聖職者以外の貴族は投降すれば、財産を失うが生命等は保障されるし、修道院等で幽閉生活を送らせもしない、というのをローマ帝国内外に示すために行われたらしい。

 実際に私や母が羽柴秀頼殿の下でそれなりに処遇されているのを聞いた貴族が、命があって幽閉もされないならば、とそれなりの数でローマ帝国に投降して来る事態が起きたのだ。


(後、言うまでもないことだが、羽柴秀頼殿の傍にいるという事は、それなり以上に警備が常に行われているという事であり、母や私を奪還して祖国モスクワ大公国復興の旗頭にしようという動きを摘むことにもつながることになった)


 そして、羽柴秀頼殿の傍で様々な見聞を自分は積んで、そのやり取りに才智を感じたと羽柴秀頼殿は言ってくれて、自分に様々なことを教えてくれるようになったのだ。

 様々な書籍(その中で最も多かったのが日本語の書籍なので、辞書と首っ引きで一時は読む羽目になった)を渡され、更に現場で質問をして、それに羽柴秀頼殿は答えるという形で、勉学を積んだのだ。


 モスクワ運河建設計画に話を戻すと、1601年中はほぼモスクワ運河の経路の調査と下準備で終わることになった。

 これまでにモスクワ大公国内で作られていた地図では正確な高低差が測定されていない等、様々な問題があって、ほぼ地図作りから行わねばならない状態だったのだ。

 

 現地を実際に足で踏みしめ、又、航空機を活用した写真撮影等も行って、精確な地図が造られた上で、実際の運河の経路は確定されることになった。

 更に運河を建設するために必要不可欠な人やモノの移動のために並行した道路の建設等も、徐々にだが実際に行われることになった。

 そうした下準備の中には資材運搬のための軽便鉄道の建設まであった。

 初めて鉄道に乗った際には、自分は本当に驚く羽目になった。

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