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第70章―7

 フョードル・ゴドゥノフの現在の立場を述べたために話がズレたので、モスクワ運河建設に話を戻すと、モスクワ運河建設は、モスクワ大公国というか、ロシア史上最大の運河工事となった。

 いや、これに匹敵する運河工事は、それこそ世界的にもスエズ運河やパナマ運河くらいしか無かった大規模な運河工事だった。


 何しろモスクワ運河は、全長が128キロに及ぶ閘門式運河の建設になるのだ。

 長さだけから言えば、全長82キロとされるパナマ運河よりも長い閘門式運河になる。

(尚、高低差や運河建設の際の地質等の問題もあるので、単純にどちらの運河建設が難しい、という話にはならない)

 余談をすれば、スエズ運河の全長は164キロ(後に拡張工事等によって193キロ)なので、更に長い運河になる。


 だから、旧モスクワ大公国の貴族が、神の御業でもないとできないと考えたのも無理はなく、又、多くのモスクワ及びその近郊の住民も同様に考えたのだ。

 それにローマ帝国による征服があるまでは、モスクワ大公国は中世の眠りの中にいたと言っても過言では無く、土木工事と言えば手作業が当たり前でもあった。

 そういったことからすれば、尚更に不可能な大事業と、モスクワ運河建設は思われて当然だった。


 しかし、「皇軍来訪」によって、この世界では産業革命が行われることになり、日本を起点にして様々な技術が広まっていき、更にこの世界で独自の進歩もあって、史実で言えば1950年代にまで技術等は今や進歩していたのだ。

 そして、その技術を活かすことで、スエズ運河やパナマ運河は建設されたのだ。

 そのこれまでに蓄積された経験と技術を活かせばモスクワ運河建設は可能である、と羽柴秀吉は構想したのであり、それを羽柴秀頼は現実にしようとしたのだ。


 又、このモスクワ運河建設は、ローマ帝国単独の事業という事に結果的にはならなかった。

 北米共和国政府にしてみれば、それこそ自国の土木機械を売り込む絶好の機会であり、それに羽柴秀頼との人脈(羽柴秀頼の妻の父は、北米共和国の高官である伊奈忠次)もあるし、潜在的にローマ帝国とは対日本の関係上から友好関係にある国である。

 だから、モスクワ運河建設への協力をローマ帝国政府が北米共和国政府に求めたら、二つ返事でそれを受け入れるという事態が起きた。


 そして、日本政府もモスクワ運河建設に、それなりの協力を惜しまなかった。

 何故かというと、ローマ帝国が国内整備に時間を掛ける程、日本としてはローマ帝国の東進に備えた準備を整えることができるからである。

 更にローマ帝国が国内整備に費用を掛ければ、それだけ軍事面に回せる費用が減少し、軍備の充実が困難になるという側面もあった。

 もっと黒いことを言えば、これを口実に様々な人を送り込むことで、ローマ帝国内部の様々な情報を探ろうとさえした。


(最も北米共和国政府も、日本政府と同様に様々な人を送り込むことで、ローマ帝国内部の様々な情報を探ろうともしたのだ。

 国家間の友情が永遠と言えない以上、将来に備えて情報収集を行うのは当然のことだった。

 最もローマ帝国側もそれを承知で北米共和国や日本からの協力を受け入れており、それなりに監視を怠らなかった)

 

 勿論、これまでのモスクワ大公国の住民が悪政等でこれまで苦しんでおり、更に戦乱で困窮してしまったことから、日本政府としては人道的な面から支援を行ったという側面もあった。

 というか、日本政府は国内外でそれが主目的であると喧伝した。


 ともかくこういった様々な裏事情もあったが、北米共和国や日本の積極的な協力がモスクワ運河建設にあったことから、結果的に1605年中にモスクワ運河は完成することが出来たのだ。 

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― 新着の感想 ―
[良い点] 三大国が協調しての大プロジェクト。 三大国とも合理的で結構な事です。 [気になる点] 運河の深さや幅だって本来は機密でしょう(仮に、公式文書に記載してあっても多少サバを読んでいる筈)だが、…
[良い点]  単純にローマの技術と資産力にモスクワ周辺の住民の熱意でモスクワ運河開削が数年早まったのではなく表向きの友好と腹黒い思惑を携えた日本と北米が各々最新技術(おそらく試験目的)を惜しみなく注い…
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