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第70章―1 ローマ帝国内の内政整備

 第70章の始まりになります。

 余りにも話が先走るようになったので、一旦、1605年時点の世界に話を戻す。


 1605年時点の世界で、最も大きく国内情勢が激動のときを迎えていたのは、言うまでもない話かもしれないが、ローマ帝国だった。

 何しろモスクワまでローマ帝国軍は進軍を1600年中に果たしており、1601年にはローマ帝国女帝であるエウドキヤのモスクワ大公への戴冠式の挙行も成し遂げることが出来た一方、モスクワ大公国内の反ローマ帝国、反エウドキヤ勢力の叛乱が、すぐには止まないという事態が起きていたのだ。


 これはある程度は、女帝エウドキヤの自業自得と言った側面があった。

 何しろこれまでのモスクワ大公国の貴族の当主や高位の聖職者達が、自分のモスクワ大公国継承権を否定して素直にモスクワ大公への即位を認めなかった報復として、東西両教会を巻き込んで彼らを破門した上で全員を処刑して火葬にしその遺灰を川に流す、という処罰を行うことを、エウドキヤは主張して実際に断行したのだ。

(尚、エウドキヤが本来の処罰の対象にしたのは、あくまでも貴族の当主や高位の聖職者である。

 だから、当主でない貴族は処罰対象では無く、破門にも付されていなかった)


 この余りに苛烈な処罰の現実を見て、多くの貴族の家族、それこそ女子どもまでもが、反ローマ帝国の武装抵抗に奔る事態が発生した。

(これは高位の聖職者の殆どが貴族出身という背景もあった。

 そのために自らの父や兄弟や夫が殺されるならば自分も戦う、と武器を取る貴族の女性や子どもが続出する事態となったのだ)

 そして、戦場で戦って負傷してローマ帝国の虜囚となった彼ら、女子どもに至るまでが、その場で安楽死させてほしい、更に遺体を土葬にされることを望むという事態にまで至ってしまった。


(これはエウドキヤが、自らが正統なモスクワ大公である以上、自分に対して武器を取るような貴族は非国民、売国奴であるとして、全員を処刑して火葬にし、その遺灰は川に流せと勅命を下し、それを東西両教会も黙認したことから起きた事態だった。

 このために戦場で負傷して捕虜になった殆どの貴族が、死後の復活を信じる良きキリスト教徒として、安楽死から土葬にされることを望むという壮絶な事態が起きてしまったのだ)


 更に言えば、モスクワ大公国は、エウドキヤの父であるイヴァン4世の崩御後、低空飛行と言えば低空飛行だったが、フョードル1世やボリス・ゴドゥノフの下でそれなりに統治が行われていた。

 そのためにモスクワ大公国の貴族が、エウドキヤに対する武装抵抗を行おうとすると、それなりに住民から支持が集まる現実までがあった。

(多くの人間にとって、余程の事が無い限りは従前からの支配者に従うのが当然である)


 このためにローマ帝国は、旧モスクワ大公国領内に軍政を敷くというよりも戒厳下に置いて、こういった貴族が主導する叛乱を叩き潰すことに数年に亘って奔走する羽目になった。

 このモスクワ大公国の貴族らが主導した叛乱は、本当にモスクワ大公国で広範囲に及ぶものであり、例えば、ニジニ・ノヴゴロドを拠点にしたドミートリー・ポジャールスキー公率いる叛乱軍は、クジマ・ミーニンらの大規模財政支援もあったことから、一時はモスクワ奪還を果たせるのでは、という勢いを示す程だった。


 又、ロストフ府主教フィラレート(史実同様にミハイル・ロマノフの実父)も、ローマ帝国に対する抗戦を呼びかけ、エウドキヤは従妹ではなく偽者であると言明した。

(フィラレートの叔母は、エウドキヤの実母のアナスタシアである)

 このことはエウドキヤを激怒させて、その圧力から異端審問でフィラレートは異端とされ火炙りになる事態が起きた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 苛烈です。この苛烈さが近代ロシアの礎になることを願います。 [一言] 支配層がほぼ完全に温存されたフランス、ポーランド・リトアニア共和国。 旧支配層がかなり残存したであろうイタリア。 旧支…
[良い点]  モスクワ陥落までがあまりにうまく行き過ぎたのか壮絶な修羅場と化したロシアの大地( ̄∀ ̄)しかし雷帝以降のロシア支配層の闇を根底から覆すにはこれほどの荒療治は必要だと感じるのも確か(現代の…
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