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第69章―20

 さて、描写が前後するが、1602年夏の衆議院総選挙は、日本対建州女直戦争で日本が一時は苦戦したが最終的には勝利を収めたこと等から、日本本国の有権者の世論が現状の与党政府支持に傾いたために、労農党が引き続き第一党を占めることに成功し、二条昭実首相が労農党及び他の中国保守党を始めとする政党を準与党として内閣を組織した。


(二条昭実は貴族院議員であり、更に五摂家の当主の一人という立場にもあることから、公式には無所属議員という立場にあったためである。

 尚、あくまでも公式にはであり、二条首相自身も自らを労農党の事実上の党員と自認し、周囲からも労農党に事実上所属している、と二条首相は見られていた)


 そして、二条内閣は衆議院で安定多数を確保することに成功し、言うまでもないことだが自らの家系を駆使して、貴族院でもほぼ過半数を確保したことから、安定した政権運営を行えていた。

 こうした背景から、1603年末に内閣提出法案として、国会に日本本国政府の要請に対して恒常的に1個大隊規模の派兵ができるだけの軍備を調えられた州については、日本本国政府と相互防衛条約を締結することや戦時には日本本国が軍事指揮権を握ること等を条件として、自治領になることを認めるという法案、通称「日系植民地自治領化法案」を二条内閣は国会に提出することを決めたのだが、この法案の可決、成立には意外と難航することになった。


 その背景だが、連立与党内、いや野党内も含めて、政党内のこの問題についての意見の取りまとめが難航したという事情がある。

 例えば、労農党内部の事情を言えば。


「池田輝政はゴネているのか」

「二条内閣が自治領化法案を提出した場合、党議拘束を掛けるべきではない、党議拘束をどうしても掛けるというのなら、本会議採決当日の欠席も辞さない、と主張しています」

「池田輝政に付いて欠席しそうな衆議院議員の数は」

「労農党系の無所属議員を併せれば30名は超えそうです」

「厄介だな」

 伊達政宗農水相は、第一秘書の片倉小十郎らと衆議院での票を事前に読み合っていた。


「池田輝政殿の義父は徳川家康殿ですから、義父の意向が入っているのやも」

 そのやり取りを聞いた上里愛が口を挟んだ。

「何故に北米共和国の前大統領が、日系植民地自治領化法案に口を挟んでくるのだ」

「カリフォルニアをお忘れですか。松平信康殿が、満洲への派兵の為にカリフォルニアは2個大隊を派遣する用意があるとまで言われたでは無いですか」 

 政宗の反問に、愛は即答して、それを聞いた政宗と小十郎は唸った。


 徳川家康と松平信康は未だに絶縁状態である。

 そして、カリフォルニアは北米独立戦争の悪夢から、平時でも日本本国から独立した独自の軍事力を持つことを、多くの住民が切望していた。

 こうしたことから、この満州への派兵問題から日系植民地の自治領化問題が起きた際に、カリフォルニアの住民は松平信康を旗頭として、約100万人が住んでいるカリフォルニアからは2個大隊を満州に派遣したい、とまで言い出したのだ。


 だが、そんなことになったら、北米共和国側も対応した軍拡に奔らざるを得なくなる。

 唯でさえ原爆や宇宙ロケット開発費用捻出にそれなりに苦労している北米共和国にしてみれば、カリフォルニアが独自に軍事力を保有することは望ましくないことで、その点で武田信光現大統領と徳川家康前大統領は一点共闘した可能性は否定できない。


「実際に和子伯母様も、そのことは言われて来たでしょう」

「そう言えば言われたな。カリフォルニアが独自の軍事力を持つのを、絶対に北米共和国は看過できないと。本当に厄介だな」

 愛の更なる言葉に、政宗は唸るしかなかった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] なんとかかんとか言っても北米共和国は仮想敵国。北米共和国が余り露骨に介入すると、かえって自治領化に賛成せざるを得ない議員が増えそう。 [気になる点] いくらなんでも、池田輝政さんは、義父に…
[気になる点]  なんといつの間にか政権与党の反主流派になってる池田恒興さんの派閥、母体が労農党創成期の古参なのにまるで戦後の保守政党の離合集散を見るようなシビアさですな(・Д・)そして史実で親徳川だ…
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