第69章―3
さて、改めて1600年前後の日本本国の人口について述べるならば、約2200万人にまで増えてはいた。
更に相変わらず年2パーセント前後での人口増が続いてもいた。
何しろ何だかんだ言っても、(史実の日本と比較して北海道や琉球(沖縄)等が日本本国外の扱いになるとはいえ)日本本国の国土は、それなりに開発等について、まだまだ余裕がある現実があった。
そして、日本本国内の工業化が本格的に推進されている現実もある。
こうしたことが、日本本国内の人口増を積極的に求める状況を引き起こしており、人口爆発現象が日本本国内で収まらない有様を引き起こしていたのだ。
だが、そういった状況にあることが、日本本国軍の量的拡大を様々な意味で妨げていた。
この当時の日本本国軍は、陸軍が10万人程、海軍が5万人程といったところだった。
日本本国の人口が約2200万人ということからすれば、陸軍を2万人程増やすのは人口面だけ見れば不可能どころか、容易なように見える。
だが、ここで日本本国内の開発に余裕があり、更に工業化が進んでいるという現状が絡んでくる。
それこそこういった状況から、色々な面で軍人は余り人気が無い職業に日本本国ではなっていた。
日本本国の若者にしてみれば、それこそ民間で働く方が色々な意味で容易に稼げるからだ。
それなのに、きつくて汚い軍人を志願する若者は、余程の人間と言っても過言では無かった。
こういった状況にあることから、陸軍の将兵の処遇、具体的には給料等については優遇されるように、日本本国陸軍の幹部は政府に恒常的に働きかけてはいたが。
そうは言っても、軍隊というのは基本的に金食い虫であるという現実がある。
それこそ兵器の更新を行わないといけないし、新兵器の開発等も行う必要があるのだ。
そういったあれこれを考える程、金銭面の問題も相まって、1万人を超える陸軍の大幅な増員を行うというのは極めて困難な状況に当時の日本本国はあったのだ。
そして、そういった現実を熟知している上里清は、現状打開の方策に頭を痛めることになった。
軍人としての視点だけから言えば、それこそ北米独立戦争時にやっていたように徴兵制の再施行を日本本国で行うように訴えたいのが本音だが。
そんな訴えを実際にしても、日本本国の多くの政治家はそれを無視するだけだろう。
陸軍の大幅な増員を戦時だから一時的に行うというのならば、まだ政治家や国民に対して理解が得られるだろうが、武田勝頼陸相が自分に対して言ったのは、平時に陸軍の人員を恒常的に1万人以上増やせということなのだ。
そんなあらゆる意味で不人気な政策(何しろ金は掛かるし、軍人志望者も少ない現実がある)を、政治家が積極的に唱える訳が無い。
上里清は苦吟した末に、身内に相談して打開策を考えることにした。
上里家の閨閥は、それこそ小早川道平外相や伊達政宗農水相とつながっているからだ。
(細かく言えば、上里清の妹の九条敬子は、二条昭実首相の義姉になる。
だから、二条首相にも極めて薄いが上里清は繋がっているといえるのだが、流石に現首相に相談するのを上里清は躊躇ったのだ)
そして、小早川外相は上里清の問いかけに色よい返事をしなかったが。
伊達農水相は、思わぬ逆提案を上里清の問いかけにしてきた。
「この際、植民地から将兵を大量に募りませんか。それで、事実上の日本軍の大幅な拡大を断行するのです」
「植民地から将兵を募るか。実際に北米独立戦争にやったことはあるが」
「あれは戦時特例という形でした。今回は、平時ですが植民地から将兵を募ってはどうかと」
「何か悪いことを考えていないか」
「悪いこととは心外な」
叔父と甥は腹黒なやり取りをした。
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