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エピローグ―4

 4話目になります。

 4話目は主に上里愛視点になります。

 それと同じ光景を、上里愛も見ていた。

 そして、愛は改めて考えた。

 徳川完子は仏教徒に改宗して、九条幸家と結婚するのだろうか。


 日本人の多くが、そんなに宗教にうるさくないとはいえ、夫婦というか家庭は基本的に同じ信仰を持つのが当然とされている。

 今のところ、完子は両親というよりも母の影響から、東方正教の信仰を守っている。

 だが、九条幸家と結婚するとなると、完子は東方正教の信仰を守り続ける訳にはいくまい。

 そんなことを自らはマンダ教徒である愛は考えた。


 だが、その一方で日本の宗教に関するおおらかさを、愛は想起せざるを得なかった。

 この集いは確かクリスマスも兼ねている筈だ。

 クリスマスは本来はキリスト教の集い、完子が東方正教徒なのでクリスマスをすることになった。

 完子の実母の小督が織田家に寄宿した際、小督がクリスマスをやりたい、と織田美子に訴えたことから、織田家ではクリスマスをするようになったとか。

 そして、小督が徳川秀忠の下に嫁いだことから、一旦、クリスマスを織田家はしなくなったのだが、完子が再度、寄宿するようになったことから、織田家のクリスマスは復活したのだ。

 仏教徒がクリスマスをしていいの?

 と愛としては考えてしまうが、完子一人でするのもどうかということで皆でするのだ、と養父母に言われては、その通りとしか言いようが無い。


 更に言えば、九条兼孝や二条昭実は共に12月生まれで、実父の二条晴良が多忙であったことから、誕生祝の会はずっとまとめてやっていたらしい。


 そういった諸々のことをまとめてこの日に祝ってしましょう、と織田美子が言い出し、この場に人を集めた次第だった。

 そして、愛は上里清夫妻の事実上の養女として、この場に来ている。


 愛は更に思いを馳せた。

 義妹にして実の娘の上里美子は、誰と結婚するのだろう。

 美子を自分と同じようにマンダ教徒にしようと自分が考えなかったことは無いが、北米共和国のマンダ教は、私の目から見る限り、完全に私の信じるマンダ教とは別の宗教になっている。

 そして、私の知る限り、私の信じるマンダ教の聖職者は私や義妹の美子が赴ける所にはいない。


(細かいことを言えば、オスマン帝国内のチグリス・ユーフラテス川の畔に未だにマンダ教徒の集落が数をかなり減じたとはいえど健在であり、そこには聖職者もいる筈だが。

 愛は一旦、イスラム教スンニ派に改宗して、再度、マンダ教に改宗した身であり、下手にオスマン帝国に入国した場合、イスラム教スンニ派の熱心な信徒から公然と愛は命を狙われかねない身なのだ)


 そんなことから、養父母の言葉もあって、義妹の美子は仏教徒、浄土真宗本願寺派に入信した。

 とはいえ、日本の宗教風俗に美子は染まっていて、平然とお宮参りに行く有様だ。

 むしろ、完子の方がそういった点では堅く、神社仏閣に参拝するのを嫌がるらしい。

 東方正教徒なので、異教に触れる訳にはいかないという理由だとか。

 でも、そんなことを言ったら、幸家と完子の結婚はままならないのだが、恋愛と信仰は完子の中では別扱いなのだろう。


 愛がそんなことを考えていると、祝いが始まった。

 祝いと言っても、それこそ色々な祝いをまとめてやるので、無宗教もいいところだ。

 そして、こんな大らかな祝いに、最初の頃の愛は戸惑ったが、今ではそれに慣れてしまった。

 

 愛は祝いを楽しみながら想った。

 宗教が違うからと言って人々が争うことが無く、又、幸せな結婚をして家庭が築ける世界になりますように。

 日本本国や北米共和国のような国が世界で増えれば良いのだけど、それは私が生きている間には中々に難しいことなのだろう。

 愛は義妹の美子の書いたレポートの内容を思い起こしつつ考えた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 仏教徒がクリスマスパーティー。日本らしい風景。
[良い点]  宗教に真摯な人ほど現代の日本人の宗教に対するユルユルな雰囲気に面くらってしまう、元々素朴な神仏混淆ぐらいだった戦国の世にクリスマスを祝うぐらいは宗教観が緩い皇軍の人々(まあ中には狂信的な…
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