第67章―12
アフリカ大陸からポルトガルに関する話になります。
小学4年生とはいえ、もう少し詳しい筈というツッコミがあるかもしれませんが。
現実の小学4年生でアフリカ大陸の諸国家の現状をどこまで把握しているでしょうか。
その後、徳川完子と久我通前、上里美子はアフリカ大陸について触れることになった。
とはいえ、このアフリカ大陸についての情報も極めて乏しいのが現実だった。
「北東アフリカ、東地中海沿岸や紅海沿岸はローマ帝国領と言って間違いないのよね」
「そして、いわゆるアフリカの角の部分にはエチオピア王国が存在していると」
「エチオピア国王自身は皇帝と自称しているけど、日本もオスマン帝国も国王と見なしているのね」
「実際問題として、領土等からすれば王国としか言いようが無いからね」
完子と通前は辛辣な会話を交わした。
実際、エチオピア王国の領土の規模からすれば、その通りとしか言いようが無かった。
だが、エチオピアにはエチオピアの論理がある。
それこそ非カルケドン派のエチオピア正教を、エチオピアは国教と定めている。
尚、このためにカルケドン派の東方正教を事実上の国教としているローマ帝国との仲は微妙で、エチオピアとしては、自らも皇帝である以上はローマ帝国と自国は対等で、当然にエチオピア正教と東方正教も対等である、と言い張るために、エチオピアは帝国を自称しているのだ。
「そして、エチオピア王国の南となると、都市国家や地方勢力といってよいモノはあるけど、れっきとした国と言える代物は、それこそアフリカ大陸の沿岸沿いには皆無と言っても過言ではなく、モロッコのサアド朝の王国にまで至る訳か」
「それこそ喜望峰周辺に造られた日本の植民地が、こういった地域の最大の国家といっても間違いない気がするわね」
久我通前の言葉に、徳川完子は辛辣な言葉を発した。
実際、上里美子の目からしても、二人の言うことは間違っていなかった。
コンゴ王国やソンガイ王国等、それなりの国家がアフリカ大陸内部において存在していない訳ではない。
だが、奴隷から年季奉公人と看板を掛け替えただけといっても過言ではないアフリカ大陸から南北アメリカ大陸の日系植民地や北米共和国への人身売買が、アフリカ大陸の国家を結果的にむしばんでしまい、色々な意味で国家の体を為さなくなっているのが現実だった。
勿論、日系植民地や北米共和国にしても、年季奉公人が良いことだと今では考えなくなっている。
だが、「皇軍来訪」から南北米大陸の日系植民地開発、更には北米共和国独立といった流れ。
更にはその余波と言えるバルバリ海賊の海賊を廃業して年季奉公人商人への転職等が、結果的にこのような流れを作っていた。
南北米大陸の大規模開発となると大量の人手、年季奉公人が必要不可欠だったのだ。
そして、需要があればそれを満たそうという供給が起きるのも歴史的には良くあることだった。
こうしたことが、この世界のアフリカ大陸の国家をむしばんでしまったのだ。
尚、モロッコのサアド朝だが、ポルトガルの起こした十字軍を「三王の戦い」で返り討ちにして、セバスティアン1世を戦死させた。
このことが(この世界の)ポルトガルでブラガンサ朝を成立させることになった。
何しろ(この世界の)ポルトガルは全ての植民地をこの時までに日本によって喪失しており、その結果として財政は完全破綻していて、スペイン王フェリペ2世でさえ、
「私がポルトガル王に即位したら、スペイン王国が破綻する」
と逃げる惨状だった。
そのために、ポルトガル国王に誰が即位するか、押し付け合いの果てに、セバスティアン1世の大叔父のエンリケ1世が短期の王位に就いた後、ポルトガル王女カタリナがカタリナ1世として国王に即位して、ブラガンサ朝を成立させる事態を引き起こした。
そして、カタリナ1世はポルトガル王国の破産を宣告して借金を全て踏み倒す、という荒療治を行って王国の再建を行っていた。
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