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第67章―8

 さて、徳川完子と久我通前は、やっとの思いでフィリピンやインドネシアをまとめた後、いわゆるインドシナやシャム、ビルマに取り掛かることになった。

 もっとも、ここにはそれこそ時代のヒーローがいて、二人はそれに魅了されていて、そちらを調べる方に二人は奔ってしまった。


「シャム王国のナレースワン国王、後世にまで大王として伝わるだろうと謳われる名国王ね」

「政治、軍事共に超一流であると共に、超一流の格闘家でもあるとか」

「素手の格闘では、生まれてから未だに不敗との伝説までナレースワン国王にはあるらしいわね」

 完子と通前は、この辺りの国を調べるよりも、ナレースワン国王を調べることに熱中して、そんな会話を交わしていた。


 上里美子としては、二人の会話に素直に加わりたいが、そんなことをしては宿題が終わらない。

 心を鬼にして二人には、

「ナレースワン国王が偉大なのはその通りだけど、それぞれの国や地域のまとめを作るのが最優先でしょ。時間が本当に無いのよ。急ぐのよ」

と美子は冷たく言わざるを得ず、完子と通前にしても、

「仰る通りです」

と共に肩を落として、まとめ作りをせざるを得なかった。

 

 さて、その内容だが。

 北部と中部のベトナムは表向きは黎朝の下で統一されていたが、実際は北部は鄭氏が、中部は広南阮氏が分割統治していて、両氏が抗争している状況だった。

 そして、南部ベトナム、カンボジア、ラオス、ビルマ東部では、シャム王国の宗主権を事実上認めた小国というよりも勢力が分立していた。


 何故にここまでシャム王国が強大化したかというと、日本及びマラッカ王国との三国同盟と、先代のヨートファー国王の娘婿として即位したナレースワン国王の才能があったから、というのが二人のまとめとして出来上がることになった。

(というか、二人の目ではそれが精一杯だった)


 だが、美子の目で言わせてもらうならば、日本の積極的な後押しがシャム王国を強大化させていた。

 又、ナレースワン国王が娘婿に過ぎなかったのも、ナレースワン国王が奮闘した要因だった。

 ナレースワン国王は先代国王の実子でない、として即位当初ではシャム王国内の支持はそう高くはなく、ナレースワン国王は外征等で自らの権威を高める方向に奔り、又、日本も東南アジアを安定させるために、シャム王国の強大化を後押ししたのだ。

(ヨートファー国王は成長した息子に恵まれず、王族の血を承けている忠臣で大宰相を務めたピレーントーンテープの息子のナレースワンに娘を嫁がせて、王位を継がせたのだ)


 そして、美子の目には見えなかった視点をいれれば、セイロン島のポロンナルワの存在もあった。

 1550年代に再興されたポロンナルワで修行した上座部仏教の僧侶達は、東南アジア地域で相互支援のネットワークを徐々に築いて積極的な教勢拡大を図ったのだ。

 そして、シャム王国はヨートファー国王以来、このネットワークに人や財物の支援を行っていた。

 こうしたことから、ナレースワン国王の外征を、このネットワークが支援する事態が起き、シャム王国の拡大を成功に導くことになったのだ。


 尚、日本がシャム王国を支援したのは東南アジアで戦乱が続いていては様々な問題が他にも起きて、それこそ商売等に差し障りが出て、交易国家の日本にとってよろしくない事態が起きるからだった。

 実際に「黄金の三角地帯」では一時はアヘン系麻薬が大量に製造されて、それこそ日本やインド等にまで密輸出される事態が起きた程だ。


 幸いなことに日本の秘密裏の依頼もあって、ナレースワン国王自らの親征で「黄金の三角地帯」を、ほぼ消滅させることができたが、そういった様々な背景がシャム王国の強大化にはあったのだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ナレースワン大王、史実以上に大活躍。 日本の主要な同盟国、 イスラム教スンニ派カリフのオスマン帝国、 上座部仏教の大檀越筆頭の暹羅王国。 バランスが良いですね。 両方とも史実世界でも親…
[良い点]  史実シャム王国でも“救世の大王”と語り継がれ現代で最もタイの国民に畏敬されているナレースワン大王( ̄∀ ̄)この皇軍改変世界では強大な隣国ビルマからの足枷が無かったためか史実を越える偉業を…
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