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第66章―1 東アジア情勢の変化への胎動

 新章の始まりになります。

 そんなやり取りを伊達政宗と上里愛がしていた1600年7月、二条昭実首相の了解を得て、小早川道平外相や武田勝頼陸相、九鬼嘉隆海相といった面々は、外務省の公式には存在しない外局である日本諜報部の長官である黒田官兵衛を交えて、明帝国と李氏朝鮮に対する日本外交の大幅な転換をすべきか否かを話し合っていた。


「皇軍来訪」以来これまでの日本の対明、対李氏朝鮮外交は簡明といえば簡明なものだった。

 まず、明に対しては、推古天皇以来の遣隋使以来、中国の王朝交代があろうとも、ずっと不変となっている(筈の)日本との対等外交を求める。

 対李氏朝鮮に対しては、新羅や百済、任那との関係以降、ずっと不変となっている(筈の)日本が上位の外交を基本的に求める。

 この二つを基本路線として、日本は明や李氏朝鮮に対して外交関係を締結しようとしているが、明や李氏朝鮮はそういった外交関係を締結することを拒否しており、日本と明、李氏朝鮮の間には公式の外交関係は締結されず、公式には戦争状態といっても過言ではない状態が続いていた。


(尚、明は中華思想から、日本に対して朝貢国としての外交的態度を執ることを求めていた。

 一方、李氏朝鮮としては表向きは日本と対等な外交関係を望んでいた。

 ここで表向きというのは、朝鮮政府内部ではそうは言っても、日本を東夷の蛮国と見なす者が多かったからである)


 とはいえ、日本にしてみれば、その状態でこれまでは特に問題は無かった。

 倭寇による民間貿易は、表向きは明や李氏朝鮮の海禁政策によって取り締まられていたが、実効性は全く無く、活発な民間貿易が行われていたからである。

 そして、この民間貿易は大幅な日本の貿易黒字で、大いに日本が潤っていた。

 更に倭寇のほとんどが明人や朝鮮人であり、日本人がほぼいないというのも、この関係を維持しておけばいい、という主張を助長していた。

 日本にしてみれば、自国民保護の必要性が乏しいということになるからである。


(それにそもそも論を言えば、日本と外交関係を断絶して、公式に戦争状態にある国である明や李氏朝鮮に勝手に行く日本人を、日本政府がどこまで保護する必要があるのか、ということである。

 日本政府の許可なくして、勝手に日本人が明や李氏朝鮮に行くのならば自己責任でやってくれ、日本政府は関知すべきではない、という世論が日本内部で圧倒的多数になるのも当然だった)


 ともかくそんな日明、日朝関係が「皇軍来訪」以来の60年近く続いていたといっても間違いなかったが、世界情勢の変動は日明、日朝関係にも影響を及ぼそうとしていたのだ。


「まず、外相として言わせてもらいますが、明も朝鮮もそれこそ戦争をしない限り、日本との外交関係について自国の主張を曲げるつもりは全く無いようです」

 小早川外相の発言に、黒田諜報部長官は同意の相槌を無言でうった。


 それを見た武田陸相は、渋い声で言わざるを得なかった。

「朝鮮だけとの戦争ならば、十二分に勝算はあり、朝鮮全土を征服してみせる。そして、朝鮮政府に城下の盟を誓わせる(降伏させる)ことも、朝鮮王室が明の下に逃亡しない限りは可能だろう。だが、問題はそうなった場合に明が参戦することだ。日本陸軍の規模は徐々に拡大されつつあるが、そうは言っても前線部隊として数えられるのは約10万人といったところ、これ以上に増やすとなると完全に日本国内に戦時体制を敷くしかなく、更に明の領土の広大さを考えると、日明の全面戦争を行って明全土を征服する等、日本陸軍にとっては完全に手に余る事態としか言いようがなくなる」


 武田陸相の発言を聞いた九鬼海相も、その言葉に完全同意するのを無言で肯くことで示した。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ①小早川道平外相・武田勝頼陸相・九鬼嘉隆海相・黒田官兵衛諜報部長官。メンツが豪華過ぎ。 ②倭寇のほとんどが明人や朝鮮人であり、日本人がほぼいない。但し利益は日本人が吸い取るwww そう言え…
[良い点]  史実の実績を考えると錚々たる面子で語られる日本の新たな戦略に読者もワクワク♪ [気になる点]  おおむね「利が無く苦労しか無い」ゆえに日本の視点では捨て殺しにしていた支那情勢(*´ω`)…
[一言] やはり中国攻めは挺身隊と戦車部隊を用いた電撃戦で明の伝令が北京に着くよりも早く渤海湾より進撃、北京を包囲して王族を逃さず現地統治機関を掌握するしかなさそう。
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