第64章―5
さて、こんな感じでこの世界初の反応兵器(原爆)実験は成功裏に終わった。
様々な測定機器が測定した反応兵器の威力だが、最終的な判断としては。
「約20キロトンの威力と判断されるか」
「その通りです」
「ふむ」
そう上里清と織田信忠は会話を交わすことになった。
勿論、これはTNT火薬を炸裂させた場合の威力換算にだけしか言及していない代物であり、それ以外の反応兵器爆発に伴う閃光や放射能汚染等については言及していない。
だが、TNT火薬の威力換算だけに絞っても、世界史上初の爆発威力なのは間違いない代物だった。
「本当に爆発するとはな」
「ええ、大成功ですね」
「その通りだろうがな」
義理の叔父甥になる清と信忠は話を続けたが、その一方で清は信忠から目をそらしている。
それが、信忠の癇に障った。
信忠は表向きは温厚だが、それこそ織田信長と織田(上里)美子の長子にもなるのだ。
実際には大きな猫を被っていると言われても仕方ない程の癇癪持ちでもある。
だから、身内であることも相まって、信忠が清を問い詰める事態を引き起こした。
「言いたいことがあるならば、ハッキリ言われてはどうですか」
「ああ。科学者の一部の声が聞こえたか?あれ程の小さい威力とは思わなかっただと」
「聞こえなかったとは言いませんが」
清の言葉は、信忠の予想外であって、答えを口ごもらせることになった。
「実際にそれこそ豪州大陸の生物が絶滅する危険さえある、と実験前に警告されていたからな。それから考えれば、科学者の一部が小さい威力だというのも無理はない」
「確かに」
叔父は何を言いたいのか、そう信忠は考えた。
「だが、その声を聞いて自分なりに考えたのだが。大威力の兵器開発にまい進していっては、地球の生物全てが絶滅する事態を引き起こすのではないか、と本当に怖くなったのだ。反応兵器はこれまでの通常の兵器とは異なり、それこそ放射能汚染等の被害まで引き起こすことになるからな」
「言われてみれば、そうですね」
叔父の言いたいことが、信忠の頭の中にも徐々に分かってきた。
「自分の兄や姉が生きている間に、反応兵器を実際に兵器として保有するのを禁止しないと地球の生物全てが絶滅する事態が起きかねない気がする。今ならば、それこそ兄妹姉妹、従兄弟姉妹といった気心の知れた者同士が話し合えるが、それもそう長くはもたないだろう。更に言えば、兄弟姉妹ならば理解し合える訳ではない。それこそ自分の姉二人の所業を見れば明らかだな」
清はいつか自嘲していた。
信忠は想った。
叔父の言う通りだ。
自分の母の織田美子と叔母の武田和子、その二人の対立が北米独立戦争を引き起こしたといっても間違いないのだから。
「取り敢えずは、今回の実験結果を上層部に報告して、その上で他のところに斜めにも伝える。そして、反応兵器について何らかの制約が世界中で行われるようにせねばな。協力してくれるか」
「叔父上に協力します」
清の言葉に信忠は敬礼しながら答えた。
「よろしく頼む」
清はそこまでいった後、他の面々と日本本国に向かって報告書を上層部に提出等していった。
とはいえ、そうした行動がすぐに成果が挙がる代物で無いのも事実だった。
(メタい話をすれば、この部が終わった後で清の行動は成果が挙がることになる)
上里愛と美子は、そういったことを経験した清と北米から帰国した後で逢った次第だった。
清は美子の言葉に微笑んで相槌を打ちながら、頭の片隅で考えた。
反応兵器実験のてん末等が、愛には見透かされたようだな。
義姉の織田美子を騙せる程の義娘の愛にしてみれば、容易なことだったろう。
本当に反応兵器実験が成功することは、世界にとって良かったのだろうか。
これで第64章を終えて、、次話から第65章で伊達政宗らが主に動いて日本と日系植民地の現在の関係について語られることになります。
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