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第64章―1 太陽が地上で輝くとき

 新章の始まりになります。

 さて、上里清にしてみれば今では子どもらになる上里愛や上里美子が北米への旅行に旅立った翌日、清は豪州に向かっていた。

 更に言えば、愛や美子が北米にいる間に、清は豪州から帰ることにもなっている。


 清が豪州に向かうのは、この世界では初めての反応兵器(原爆)実験のためだった。

 当然のことながら、この反応兵器実験の実施は厳重な国家機密事項となっており、それこそ詳細を知る者はできる限り絞られていて、実際に実験を実施する者以外でこのことを知っているのは、辛うじて二桁になる程度の数に清の知る限りではなっている筈だった。

 とはいえ、こういった情報がどこから漏れるのか、分かったものではない。


 だからこそ清にしてもできる限りの欺まんを行うことになった。

 表向きは清が豪州に向かうのは、将来の反応兵器実験実施に相応しい場所を選定するため、ということになっている。

 反応兵器開発は遅延気味で、実際に実験を行えるのは来年以降の見込みと装っているのだ。

(実際には、現地視察等をした部下が反応兵器の実験場を選定しており、清はそれを追認していた)


 他にも実験参加者はできる限りの欺まんを行った上で、反応兵器の実験場に向かっていた。


 さて、豪州行きの軍用輸送機に乗り込んで豪州へ、更に軍用自動車等を使って反応兵器実験場にたどり着くまでの間、上里清はどうしても色々と考えざるを得なかった。

 本当に反応兵器実験実施にまで1600年に漕ぎ着けられるとは、当初の頃は考えられなかった。


 実際に1600年には反応兵器実験を行おうというのは、それこそ1600年だと丁度区切りがいいから、という理由で決められたといっても過言では無かった。

 例えば、ウラニウムの分離濃縮にしても、様々な方法が暗中模索から検討される有様であり、それが上手く行くとしてどれだけの時間が掛かる代物なのか、日本というか世界最精鋭の物理科学者も精確な見通しが当初は立てられない有様だったのだ。

 こんな状況で、反応兵器開発についての精確な日程、計画を組もう等は不可能な話だった。

 だから、1600年に反応兵器実験を実施しよう、と決めた時、実は科学者程、できれば良いですねと暗に匙を投げたようにいう有様だったのだ。


 だが、孜々営々たる努力は、結果的にだが1600年8月に反応兵器実験を行うことを可能にすることになった。

 そして、どこで反応兵器実験が行われるかが検討された末に、日本の植民地である豪州のノーザンテリトリーにあるタナミ砂漠が選ばれることになった。

 何故なら、それこそ人が全く住んでいないといっても過言でない土地であり、それこそ反応兵器実験の為に住民を追い出す必要が無く、その費用も掛からないし、住民から機密が漏れる心配は皆無といえるからである。


 勿論、これだけの辺境となれば、その一方で、反応兵器以外の様々なモノ、例えば観測機器等を運び込むのもそれどころではない手間暇や費用が掛かるのは止むを得ない話になる。

 だが、この当時の日本は最大で10トンまでの物資ならば、大型輸送機に搭載できるようになっており、こうした背景からタナミ砂漠に自動車を使って、小型飛行場をまずは造り、それを活用して大型飛行場を造成して、という方法によって、最終的に大型輸送機を使って日本本土からタナミ砂漠までの反応兵器等の輸送を成功させたのだ。

(勿論、輸送途中では分解されており、反応兵器の最終組み立てはタナミ砂漠内に設けられた実験場で行われることになったのは止むを得ない話だった)


 上里清は、タナミ砂漠の実験場に降り立った時に、改めて色々と考えざるを得なかった。

 本当に反応兵器はどれだけの威力を実際に持っているのだろうか。 

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