第63章―14
そんなやり取りが上里愛と於大の間であったが、それ以外は上里姉妹と松平家を始めとするカリフォルニアにいる面々との歓談はそれなり以上に上手く進んで、身内として一晩の間を仲良く過ごした。
何しろ色々と紆余曲折があったが、織田信長と織田(上里)美子の間の長女になる松平(織田)徳子と上里姉妹は義理の従姉妹という関係になる。
更に今では遠山信房と名乗っているが、この遠山信房は松平徳子の実の弟になり、その養母のおつやの方は織田信長の実の叔母になる等、カリフォルニアには上里姉妹にしてみれば、遠縁で義理の関係にはなるが、それなりに身内がいたのだ。
こうした関係があることから、上里姉妹は北米共和国を訪れた序でにカリフォルニアに寄って、松平家を始めとする面々と歓談することになった。
さて、一晩を松平家で過ごした翌日、慌ただしいと言えば慌ただしいが上里姉妹は、カリフォルニアからダッチハーバー経由で日本本国に向かう民間航空機に乗り込んでいた。
もっとも上里姉妹はダッチハーバーで乗り換えることにもなっていた。
さて、何でこんなことになるのか、余談ながらここで述べると。
カリフォルニアは日本領だが、それ以外の北米はほぼ北米共和国という現実からくるものだった。
つまり、日本本国からカリフォルニアまでは国内線だが、日本本国からカリフォルニア以外の北米に向かうとなると国外線になるのだ。
そして、国外線となるとそれなりの入国審査等の必要が出てくるが、国内線ではその必要は無い。
こうしたことから、日本本国とカリフォルニア以外の北米との商業路線は、基本的にアンカレッジ経由で飛ぶ一方で、日本本国とカリフォルニアの商業路線は、ダッチハーバーやハワイ経由で運航されるという事態が起きていた。
このために行きと帰りで、上里姉妹の寄港地が異なる事態が起きることになったのだ。
それはさておき、ダッチハーバーからベーリング島となると、それなりどころではなく離れており、気軽にセスナ機のような軽飛行機で飛べる距離ではない。
更に言えば、ベーリング島は自然保護区として誰でも気軽に入れる場所ではない。
だから、普通ではベーリング島に向かうのには、かなりの苦労があるのだが、何だかんだ言っても上里家はそれなりどころではない家だった。
「本当に丁度いい不定期便があって良かったわね」
「うん。ダッチハーバーからベーリング島経由で日本の大坂にまで飛ぶ不定期便に便乗させて貰えて、本当に良かった」
愛の問いかけに、美子は無邪気に答えたが。
愛としては内心で苦笑するしかなかった。
ベーリング島の住民が自活の為に、ラッコの毛皮等の輸出が認められているのは既述したが。
当然のことながら、生活物資も移入しないといけないし、又、外部との郵便等のやり取りもある。
このために航空機の不定期便が、ベーリング島と要地との間では運航されている。
(船を使えばいい、と言われるだろうが、ミカドカイギュウをスクリューに巻き込む事故が多発したために、緊急事態で無ければ、船でベーリング島に向かうことは禁止されているのだ。
それに毛皮等、高価な品物をベーリング島からは輸出しており、それなりに航空機でも採算がとれるという事情も有った)
こうした事情から運航されている不定期便についての情報を、愛は養父や伊達政宗のコネを使って集めて、それを活用することでベーリング島訪問を行ったのだ。
一般の人間だと、このような不定期便の運航を調べるのも一苦労では済まないが、上里家自身が様々なコネを持っていて、伊達政宗も今や与党の有力な衆議院議員の一人だ。
だから、愛は容易に運航を把握し、妹との旅に活用することができたのだ。
当然のことながら、ネット検索等が無い時代ですので、ベーリング島に向かう不定期便の運航計画等、一般の人にはすぐに分からないのです。
(それこそ定期便が無い以上、時刻表のようなものが無い話にもなります)
ご感想等をお待ちしています。




