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第63章―7

「実際問題として、人工飼育による繁殖を数が減少している様々な種について試みているのですが、本当に上手く行く方が少ないのが現実ですね」

「でしょうね。日本でも苦労しています。二ホンカワウソとか、色々と上手く行きません。むしろ自然界で暮らしている方が、減少数が少ない気さえするのが現実ですね」

 望月千代子のボヤキに、上里愛はすぐに寄り添った答えをした。


 実際、望月千代子と上里愛のやり取りは間違っていなかった。

 北米の例で言えば、リョコウバトがいい例だった。

 

 リョコウバトは、それこそ日本人の北米大陸中東部への入植が本格的に始まる前といえる1550年前後の頃の生息数だが、原住民に対する聞き取り調査等からすれば、最低でも50億羽、最大見積もりでは100億羽近いと推定される程の生息数を誇っていた。

(尚、1550年頃の世界人口だが、史実でも、この世界でも6億人もいなかった。

 それから考えれば、その10倍以上の数をリョコウバトは誇っていたのだ)


 だが、日本人の入植が進み、更に欧州やアフリカからの年季奉公人を活用した日本人の開拓が進むにつれて、更にはリョコウバトの用途に気づいた猟が本格的に始まったことから、数が急減していくことになった。

 何しろリョコウバトは全て活用可能で、捨てる所が無いといっても過言ではない鳥だったからだ。


 羽毛はそれこそ羽根布団や羽ペンの原料等に活用された。

 肉や卵は食用にされた。

 更には何十億羽も生息しているという現実がある。

 こうしたことから、少々乱獲しても大丈夫とされて。


 それこそピーク時となった北米独立戦争(この戦争中、殆どの兵士にとって食事の際に提供されるのはリョコウバトの肉ばかりだった。他の肉は生産が戦時下にあることから滞りがちで、兵士に提供する肉として安価で大量に確保できるリョコウバトの肉は好適だったのだ)においては、毎年2億羽以上のリョコウバトが屠殺される有様になった。

 更にはリョコウバトの卵は美味であるとして、美食家から大量に求められる事態までも起きた。


 こうした結果、リョコウバトは激減することになった。

 そして、北米独立戦争が終わった後、リョコウバトが激減しているのを把握した日本本国政府が裏から「皇軍」がいた世界ではリョコウバトが絶滅しているのを北米共和国政府に密かに伝えた結果。

 北米共和国政府は慌ててリョコウバトの保護に奔る羽目になった。

 だが、この時点において、幾ら多く見積もっても20億羽余りの数しか、リョコウバトはいなくなっていたのだ。


 まだ充分以上にいる、という見方もできる数ではあったが、30年程で最大限に減少数を見積もれば4分の1以下にリョコウバトの数が激減するという事態が起きていたのだ。

 このような乱獲を続けていては、後10年余りで絶滅する可能性さえも否定できなかった。

 そういった現実から、リョコウバトの捕獲は禁止され、リョコウバトの保護に北米共和国は乗り出すことになり、更にこれをきっかけとして、多くの生物保護が北米共和国で図られることになった。


(尚、日本の場合はミカドカイギュウ保護をきっかけとして、生物保護が始まっている。

 それこそ「皇軍知識」からしてニホンオオカミ等、保護しないといけない生物が多々存在しており、更に言えば、実際に減少していっているという現実があったのだ)


 そんな現実から、多くの生物保護が図られているが、それが現実に上手くいっているかというと。

 日本も北米共和国も、様々に苦慮する現実があって、保護区を設け、人工飼育を試みる等しても上手く行かない現実が引き起こされていて、生物の絶滅回避に共に苦闘するしか無いのが現実としか言いようが無かった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点]  やはり食用や薬などにもちいられる動物は人間の魔の手から逃れられない運命なのか、現在アフリカでは中国に高値で取引出来る角を目当てにサイの密猟がやばいらしいけど漢方薬で効能を謳われるほど…
[良い点] 決して友好的とは言えない状況下、伝えるべき情報はキチンと伝えている件。
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