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プロローグ―3

 とはいえ、この上里清と理子夫妻、更にはその子の愛と美子の関係は、上里家の家中においても色々と表面上は収まった関係ではあったが、一皮むけば頭の痛い関係だった。


 例えば、上里清と理子の最初の子になる雅子は、飛鳥井雅庸に嫁いだ身だが、未だに上里愛のことを姉さんと呼ぶのを躊躇う有様だった。

 何しろ、父の元愛人なのだ、それこそこれまでの様々な人生経験から男女関係にそう潔癖とは言いづらい雅子ではあるが、それでも父の元愛人で、父との間に子どもまで生している上里愛のことを、表面上はともかく、内心では素直に姉さんとは呼べない状況にあった。


 後、上里清と理子の間の長男の克博と次男の隆も似たような態度を執っている。

 二人共に既婚の身であり、父の跡を追うように陸軍士官の路を歩んでいる。

 序でに相手を言えば、上里克博は正親町季秀の娘、上里隆は日野輝資の娘と結婚していた。

 何れも公家、羽林家の家格を持つ家であり、それなりに相応の家格の相手と結婚したと言える。

 そして、姉の雅子と同様に自らの人生経験等から、父が愛人を作って、子どもを作るのは受け入れられても、その愛人が自らの義理の姉になるのまでには素直になれなかった。


(細かいことを言えば、上里家は公家では無いのだが。

 そうは言っても閨閥関係等から、織田信長家と同様に世間からは公家と見られている現実があった。

 更に言えば家格的には羽林家や名家と同様と、上里家は見られてもいた)


 そういった婚姻関係もあって、上里克博も上里隆も親からは独立して住んではいる。

(飛鳥井(上里)雅子に至っては言うまでもない)

 そのために上里清と理子の間の子3人は、余り両親の下に顔を出さずに済まそうとする有様だった。


(後、もう一つ、子ども3人からは言いづらい現実があった。

 3人共に学習院を出ている身ではあるが、その頃の清は官位を持っていなかった。

 だから、微妙に居心地が悪い児童、生徒生活を学習院ではずっと送ったのだ。

 だが、今では清は官位を持っており、そういったことから美子は胸を張って学習院に通っている。

 正妻の子の自分達は居心地の悪い学習院だったのに、愛人(?)の子の美子は学習院の児童としての生活を幸せに送っているとは。

 事情は分かるとはいえどしっくりこない想いを雅子、克博、隆がするのも無理はなかった。


 そして、この家族関係は、上里清の実母になる上里愛子にも飛び火している。

 上里愛子は、上里清らが済む邸宅の離れというか、別宅に女中1人と共に事実上の一人住まいをしている現状にあった。

 

 上里清やその妻子らは、いつでも本宅で同居していいですよ、と愛子には言っていて、実際にそのための部屋も確保しているのだが。

 愛子にしてみれば、それこそ(第10部で既述したが)愛と美子の姉妹(?)関係について、自分に対する当てつけのような想いがどうにもしてならず、気持ちが落ち着いたら同居する、と言ったままで数年が経った次第だった。


 こんな感じで上里愛と美子の姉妹関係は、上里清と理子の間の子3人と、上里愛子にしてみれば、何とも言いづらく、できれば触れたくない関係に現状ではあった。


 むしろ、上里愛と美子の姉妹関係は、上里清の兄弟姉妹から素直に受け入れられているのが現実としか言いようが無かった。

(この辺りは上里清の兄弟姉妹が長姉の美子から末妹の里子に至るまで複雑な関係の中で育っていたというのが背景としてある)

 そういったことから、愛や美子は同年代の従兄弟達から暖かく対応されていた。

 例えば、愛は伊達政宗に気に入られて第二秘書を今では務めていた。

 又、美子にしても九条敬子の子の九条幸家から妹のように可愛がられている現実があったのだ。 

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― 新着の感想 ―
[良い点] 相変わらず上里家の多彩な縁戚。史実世界を鑑みれば、伏線のありそうな人物ばかり。
[良い点]  あー以前から思ってたけど清さんのすでに成人してる子供たちにはやっぱりしっくりこない家族関係になってんのねー(^皿^;)ほんで何故か偶然なのに愛子さんと美子さんの愛憎入り混じった関係に韻を…
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