第56章―2
何しろ「皇軍来訪」から50年余りが経ちます。
紙の上で、更に史実より遥かな少人数でのために、遅々とした研究にはなりますが、史実の1941年当時からすれば、僅かずつですが核物理学についても進歩していたのです。
さてガリレオ=ガリレイを始めとする欧州のほとんどの学者が、太陽については、そのようなことを考えている1595年現在において、日本を始めとするいわゆる日系諸国では、極めて密やかにだが、皇軍知識によってもたらされた科学知識によって、極めて遅々として進められていた研究に基づくものだが、地上に太陽をもたらすものと言える、核分裂や核融合の反応を利用した新兵器の研究開発等が現実に行われようとしていた。
もっともこの時点では、とてつもない威力を持つ新兵器の研究開発等ということで、日系諸国は様々な試行錯誤を暗中模索で行っていると言っても、あながち間違いでは無かった。
何しろ、核分裂や核融合の反応を利用した兵器が、本当にできるのかどうか、そういったことさえもこの時点では、全ての国において全く見当がつかない状況といっても過言では無かったからだ。
更に言えば、兵器として開発できる見込みが立っても、その大きさがどのようなものになるかが全く不明という段階にあったのだ。
仮に核分裂や核融合の反応を利用した兵器ができるにしても、例えば、それが重量100トン以上もの代物になっては、現時点では輸送手段が無いといっても過言ではなく、全く無意味な兵器と言われても仕方のない代物になる。
(仮に開発製造できたとしても、その製造場所で使用するしかない兵器等、実戦において役に立つ兵器と言えるだろうか?)
そういったことから、日本本国でさえも核分裂や核融合の反応を利用した兵器等については、紙の上の研究にずっと留まっていたと言っても過言では無かった。
だが、そう言った状況を一変させたとある意味では言えるのが、北米共和国が提起した月探査を将来的な目標とするロケット開発計画だった、
本当に悪く考え過ぎと言えば考え過ぎとしか言いようが無かったが。
もしも、実際に月にまで届くロケットが開発されたら。
更にそのロケットに、核分裂や核融合の反応を利用した兵器が現実に搭載される事態が起きたら。
尚、この1595年時点では、核分裂や核融合の反応を利用した兵器の威力にしても、それこそ想像上の代物に過ぎず、実際にどれだけの威力があるのか、科学者によって考えが違う現状があった。
こういった現実も、核分裂や核融合の反応を利用した兵器開発について、単純には進捗する事態が起きなかった原因だった。
だが、核分裂や核融合の反応に関する知識について、そもそもは「皇軍知識」によるものだが、日本本国だけが独占していた時代は完全に終わっていたのだ。
それこそ様々な手段によって、北米共和国やローマ帝国の内部等に、核分裂や核融合の反応に関する知識が徐々に流れるようになっており、更にはそれ以外の国にまで、そういった知識が本当に徐々にとしか言いようがないが漏れつつあった。
そういった現実からすれば、日本本国としては、核分裂や核融合の反応を利用した兵器の開発を密やかに進めて、自国の安全保障に役立てようとせざるを得ないのが、現実としか言いようが無かった。
更に言えば、日本本国がそのような行動を行えば、必然的に日系諸国である北米共和国等も、そう言った情報をどうしても掴むようになり、自国もそれに対応した行動を執ることになる。
悪循環と言えば悪循環としか言いようが無いが、そういった疑心暗鬼が結果的には日本本国や日系諸国、更にはそれ以外の国にまで、何とか核分裂や核融合の反応を利用した兵器の開発ができないものだろうか、と逸らせる事態を引き起こしたのは否定できない話だった。
そして、こういった事態は上里清らも最終的には巻き込むことになり、上里清自身やその親族を悩まさせる事態が起きたのだ。
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