第六十八章<結婚式2>
生地が決まった三日後、再度大量の侍女が招集された。
以前、尋常じゃない量の布を持ってきた商人はもちろん、デザイナーと思しき人が何人か揃っている。
その中央には無論、それはそれはイイ笑顔のお義母様が立っていた。
「ではこれから、結婚式の衣装のデザインを始めましょう。案はいくつもあるから、簡単にドレスを作って試着するのを繰り返すわよ」
逃がさないわよ、と、細められた瞳に書いてある気がする。結構怖い。
口の端をひくひくとさせながら、私とアレンは頷いた──
「これはダメ。フリルが多い」
「これはスカートが膨らみすぎね」
「あら、良いじゃない。候補に入れましょうか」
「いえ、これでは背中の出しすぎかと」
「……」
五時間後、やっとデザインが決まった。
アレンに至っては、さらに一時間かかっていた。
試着の合間に、ちょくちょく私のドレスの具合を見に来ていたのだから当然ではあるが。
それにしても、あの速さで布を加工して手早くドレスにするデザイナーとこの城の侍女たち、どうなってるの……さっきのドレスはあくまで仮のものってどういうこと……
いつものシンプルなドレスに戻ってアンナの淹れたお茶を飲みつつ、そんなことを考えていると。
「……今、戻った」
アレンがノックと共にそう言って、部屋へ入ってきた。
ノックの意味がない。
まあ、この半年で、眠るとき以外は基本、どちらかの部屋で共に過ごしているのだから、仕方がないことではある。
むしろノックをすることはする律儀さを褒めるべきか。
「お疲れ様でした」
「リリも」
長椅子から立ち上がって数歩歩き、逞しい体に腕を回す。
力強い抱擁が返されたかと思えば、額に唇が落とされ、頬を赤く染めてしまう。
それを隠すように、彼の胸元に顔をうずめた。
そんな私を腕の中に閉じ込めながら、アレンはふと、ポツリと呟いた。
「ドレス、母上はああ言っていたが、どれもよく似合っていた。──だが、その、あまりにも貴女が綺麗で、つい色々と口出ししてしまって時間をとらせた。申し訳、なかった」
ふ、と思わず笑ってしまう。
確かに時間がかかったのはそうだけれど、でも。
「いいえ。むしろ私、嬉しかったです。アレンが、嫉妬してくれるの」
嫉妬なんて、決して心地良い感覚ではないはずなのに、彼がそう感じるのを嬉しいと思ってしまう私は、きっとひどい女だ。
それでも、それが、アレンが私を愛してくれている証である以上、どうしても喜ばずにはいられない。
「そう、か」
そんな私の心中も知っているだろうに、彼は腕の力をぎゅっと強めてくる。
「好きです」
そう呟いて、私から口づけを送った。
「切実に……早く、結婚したい」
触れるだけの短いそれが終わってから、アレンが絞り出すようにして発した言葉に、私は思わず吹き出した。
糖度高めたので許して……_:(´ཀ`」 ∠):
あとちゃんと数えたら、去年4話しか投稿してなかったです。びっくり。
多分あと3話くらいかなと思います。




