第六十六章<皇太子の初恋3>
――アレンが自身の想いを自覚した後、彼はリリアーネに彼の胸の内を吐露した。
またその途中では、際限なく溢れ続ける激情を抑えきれず、彼女を危険に晒した。
瞼を閉じて脱力してしまったリリアーネはひどく軽く、このまま目を覚まさなかったらと思うだけで恐ろしかった。
彼女がすぐに意識を取り戻したから良かったものの、そうでなければ自分はどうなっていたかわからない。
だが、そんな目に合わせたにも関わらず、リリアーネはアレンのことを抱きしめたのだ。
少しでも彼が楽になるようにという思いのこめられた両手は、泣きたくなるほど温かかった。
その上、彼女はこう叫んだのだ。
「傷ついて、当たり前なんです!辛くて、当たり前なんです!自分を殺して、感情に鈍感になることが、貴方の防衛策だったんです!……それを。それを、否定しないでください!貴方が今まで自分を守ってきた方法は、情けないものなんかじゃない!」
……その言葉に、救われた気がした――否、確実に救われた。
つい数分前に自覚したばかりの恋心が、どんどん深いものになっていくのを肌で感じる。
だが、彼女の想いはまだ、自分のそれよりもずっと浅い。
ルークとの間であんな事件があったのだから、当然と言えば当然のことだ。
だからこそ、アレンは自身の想いをリリアーネへ告げるのを見送った。
彼女が想いを自覚するのを待っていたかったからだ。
こういうときは、テレパシーを持っていて良かったと思える。
そうしてしばらく経ったある日。
――リリアーネは、彼女の想いに名前を付けた。
しかもその後すぐに、アレンに告白とも取れるような言葉をかけた。
そのことに舞い上がり、早とちりしてして告白したなどということは、墓場まで持っていくつもりだ。
だが、お互いに想い合っているのだから大した問題になるはずもなく、無事二人は心を通わせた。
とはいえもとから婚約者同士なので、その日常があまり大きく変わることはない。
強いて言うならば、毎日必ず、二人きりの時間で互いに愛を伝えるようになったことくらいか。
アレンがそういった類の言葉を口にするたび、わかりやすく頬を染めるリリアーネが可愛くてたまらないので、習慣化したのだ。
それから婚約期間である半年は、彼女と順調に交際を進めることと、ランスの隣国へ間者を送り、国の中枢へ潜り込ませて良いように転がすことに費やした。
その過程で、アメリアとよりを戻したという男の子爵家も潰すことに成功した。
他国での事件であることと、アメリアはルークとの関係は一方的なものだったと主張していることから、少々手間がかかるかと思っていたが、都合よく横領に手を染めてくれていたので、あっさりと事を進めることができた。
リリアーネにもそのことは伝えたが、特に気にしたそぶりは見せなかった。
私怨を持ち込みすぎないようにと釘を刺されはしたが。
過去のことなど気にも留めず、未来を見据えて前進するリリアーネは、ひどく眩しい。
その隣を歩き続けたいと、アレンは願った。
この度も、まことに申し訳ございませんでしたあああああああああ(流れるような土下座)
……後少しで終わるはずです。そのはずなんです。




