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第六十五章<皇太子の初恋>

アレンsideです!

 ――自分がリリアーネに恋をしていると気づいたのは、いつだったか。

 

 ふと、そんなことが頭に浮かんだ。

 皇太子アレンは、腕の中で眠る婚約者の頭を撫でつつ、記憶を手繰り寄せる。

 先ほど、ようやっと自身への想いを口にしてくれた愛しい人は、体調不良の所為か、すぐに眠りに落ちてしまったのだ。

 

 残念だと思う自分もいるが、それ以上に、長時間リリアーネと触れ合えることに対して喜ぶ気持ちの方が大きかった。

 

 ……少し前の自分にこのことを話しても、絶対に信じてもらえそうにないな。

 

 思わず苦笑する。

 

 だが、彼は自身の変化を喜ばしく思っているし、自分を変えてくれたリリアーネに対して心から感謝していた。

 

 そのうち、アレンはその変化を最初に感じた数日前の出来事を思い出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……アレンは、苛立っていた。

 

 婚約者らしいことをしてみようかと、リリアーネを茶会に招こうと思ったのだが、彼女は王妃――アレンの母親に既に連れ去られた後だったためだ。

 

 しかも、国境の森に行ったのだという。

 

 あの森はリリアーネがいたく気に入っていたから――まあ、ランスの森がろくに手入れもされていない酷い場所だったということもあるのだろうが――折を見て共に出かけないかと誘うつもりだったのに。

 

 そんな、不快感を感じていることに、彼自身、少なからず驚いていた。

 

 ――彼女と過ごす時間をそこまで楽しみにしていただなんて、少しも思っていなかったから。

 

 しかし、リリアーネを掻っ攫っていったのは、自身の母親だ。

 きっと、アレンがこんな思いをすることを見越して彼女を連れて行ったのだということくらい、容易に想像がつく。

 また、それは、彼がこの感情を抱くことを肯定しているということだ。

 

 何がしたいのかよくわからないが、腹立たしいことに変わりはない。

 

 幸い、母の持つ魔法は転移なので、少しすれば帰ってくるとは分かっている。

 だが、荒ぶる自身をなかなか制御しきれず、アレンはモヤモヤとしたものを抱えながら、馬小屋で待機することにした。

 

 執務がなかなかはかどらなかったということもある。

 父には意味深な笑みを向けられたが、どういう意図があってなのかということは、母の行動同様、サッパリ分からなかった。

 

 そして、昼前になって、ようやく――実際はそこまで長い時間ではなかったのだが――二人は帰ってきた。

 

 不快感を隠そうともしていなかったからか、何もない空間から現れたリリアーネは、アレンの姿を見て、軽く口元を引きつらせる。

 

 それでも、馬から降りた彼女は冷静に、「ただいま戻りました」と、彼に頭を下げた。

 

 彼女を手で制しつつ、ちらりと母の方を見れば、とても楽しそうな笑みを浮かべている。

 そんな母に苛立ちを増幅させながらも、アレンは口を開いた。

 

 「母上、リリアーネを、どこへ連れて行っていたのですか?」

 

 どこへ連れていかれたかなど、百も承知している。

 だが、彼はそう言わずにはいられなかった。

 

 母がなんと答えるのかを試すためだけにした質問に対して――彼女は嘲笑にも似た笑みを深め、こんなことをのたまった。

 

 「ちょっと、国境までデートしていただけよ?」

更新が遅くなり、申し訳ございません。

今日から私生活の忙しさが大分マシになりそうなので、更新を再開します!

毎日更新はできませんが、少なくとも今回ほど滞ることはありません。

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