第六十四章<両想い>
私の恋する気持ちを、当の本人に読まれた。しかも、愛していると言われた。
その二つによって、私は思わず固まってしまった。
しかし、そんなことをしていても解決するはずがないと言う、妙に冷静な自分のおかげで、停止しかけた思考を無理やり作動させ、私は言葉を絞り出す。
「……えーと、アレン様――私の感情、読みました?」
「えっ?」
――今度は、アレン様が固まった。
そして、先ほどの私と同じように、唇の端を引きつらせて、言葉を発した。
「告白、してくれたのかと思ったのだが……」
ん?
そう言われれば――
“「たらればの話なんて、考えないでください。私はあの時、貴方が私を助けてくれたことがとても嬉しかったし、心の底から結婚したいと思えるのも、貴方だけ」”
言ったわ、私。告白的なことを。
自分的にはそんなつもりはなかったのだが、それが噓偽りない本心であることは、紛れもない事実。
そんな私に、アレン様はさらに衝撃的な事実を述べた。
「――貴女の気持ちを読んでいたというのも、その通りだ。ただ、言葉にしてくれるまでは黙っていようと思っていて……」
なんでも、私が恋を自覚する前から、彼自身、私の気持ちには気づいていたらしい。
しかし、勝手に心を読んで勝手に両想いだという風に接することも嫌だったため、黙っていたそうだ。
本当にできた人である。
だが、自分よりも先に自分の恋心を見られていたなんて、恥ずかしすぎる。
しかも事故とはいえ、私がその気持ちを口にするまで待てせていたと思うと、申し訳ないことこの上ない。
それに、私がやっと口にしたと思えば、当の本人にはその自覚がないって……。
色々な要因が重なって胃が痛くなってきた。
――だけど、心は驚くほど満たされていて。
先ほどから、動揺したり申し訳なさを感じているはずの私の思考には、色とりどりの花々が咲き乱れるかのような幸福の嵐が、荒れ狂っている。
そもそも、私が恋を自覚してから、胸の内をさらけ出す勇気が持てなかったのは、アレン様に嫌われたくなかったからだ。
恋心を抱いて、もっと一緒に過ごしたいだとか、他の女性に嫉妬したりして、彼の厭う女性になるのが怖かった、だなんて。
莫迦みたい。
ふふっと、笑みがこぼれる。
ずっと固まってしまっていたアレン様が、ビクッと体を震わせ、一拍後、私にジトっとした視線を送った。
――ごめんなさいね。
そんな思いを込めて、彼の背中に手を回した。
「大丈夫。ちゃんと嬉しかったです。――つい、驚いて」
安堵したように、アレン様の体の力が抜けた。
そんな彼に、私はこう続ける。
「アレン様、好きです――愛しています」
あと数話で完結です!
多分年内に終わる……はず!




