第六十二章<ぶっ倒れた毒舌令嬢1>
不覚だ。
不覚としか言いようがない。
寝台の上で、盛大にため息を吐く。
なぜ寝台にいるかというと、ぶっ倒れた私は、タイミング良くお茶を運んできたアンナに発見され、医者を呼ばれ、知恵熱だと診断され、それでも倒れたことに変わりはないからと、強制的に寝台に放り込まれたからである。
――自分の感情を制御しきれず、挙句倒れるなんて。
一国の皇太子の婚約者という立場にありながら、情けないことこの上ない。
誰もいないのをいいことに、盛大にため息を吐く。
醜態を晒したくないという理由で、先ほど人払いしたのだ。
アンナを始めとした侍女集団は、何かあったらどうするんだと視線で訴えていたが、無視させてもらった。
ふと視線をずらすと、彼女たちの置き土産である、寝台の横のテーブルに置かれた、熱を冷ます効果があるハーブティーが目に入った。
飲み忘れると後で怒られそうなので、その薄緑の液体を一気に喉に流し込む。
かなり苦かったけれど、なんとなく頭がすっきりするような気がした。
それでも、悩みが簡単に消えてくれるわけもなく。
私は相変わらず、悶々と自分の感情と向き合っていた。
――バタンッッ!
突如として、部屋の扉を開ける音が聞こえた。
思わず身構えるが、部屋に入ってきた人物を見て、警戒を解く。
部屋に入ってきた人物――アレン様は、他の何にも目を向けることなく、一直線に私のいる寝台へと向かってくる。
彼の眉間には深い皺が刻まれていて、なんというか……もの凄く恐ろしい外見になっている。
それでも、アレン様とそこそこ長い時間を共有している私には、それが心配ゆえのものだとわかる。
だから私は、彼に笑顔を見せてこう言った。
「アレン様、わざわざありがとうございます。ご心配をおかけしましたが、もう大丈夫です」
「……なら、よかった」
彼は見るからにホッとした表情になり、寝台のすぐそばに据え付けられた椅子に腰を下ろした。
――よかった。心を読まないようにしているみたい。
内心、そう安堵しながらも、私は彼を見上げ、口を開いた。
「――それに、ご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ございませんでした。ただの知恵熱だったようなので、どうか気にせず、お戻りください」
アレン様にこれ以上迷惑をかけたくなくて言った言葉だったけれど、彼は不服そうに眉を寄せ、こう言ったのだ。
「……私が居ては、嫌か?」
――ずるい。
好きな人に見舞いに来てもらって、嫌なわけがないのだ。
だから私は、ぶんぶんと首を横に振った。
それに対して、嬉しそうに微笑む彼に、トクンと胸が鳴った。
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