第五十五章<私の毒舌な婚約者6>
真っ直ぐに会場へと戻ったアレンは、躊躇うことなく扉を自分で開き、中へと入った。
先ほどはいなかった国王・王妃の二人が、青ざめた顔をして棒立ちになっている姿が、彼の目に映る。
どうやら、少々遅れて入場した矢先に、数分前の騒動を耳にしたようだ。
不憫だと思わないこともないが、自身らの息子を過度に甘やかした挙句、婚約破棄を聞いた際、動揺のあまりに肯定してしまうほど変化に弱い人間だ。
それに、出来の悪い息子の補佐のためだけに、リリアーネ嬢を婚約者の座に縛り付けたような者たちだ。
愛息子を可愛がるだけで、彼の捻じ曲がった性格を、自分たちで矯正しようとしない。
そんな彼らに同情するほど、アレンは優しくない。
そして彼は、静まり返った会場中を見渡して、口を開いた。
「お前たちの思考はすべて読ませてもらっているため、事情は全て把握している。その上で、このような騒ぎを起こしたことについて、私の方から意見させてもらう」
ひっ、という声が、どこかから上がる。
会場中の人間は皆、例外なく青を通り越して白い顔をしてアレンを凝視している。
そんな彼らの心情を抉るように、アレンは言葉を吐き捨てた。
「これでも私は忙しい。本来ならば、こんな小国の社交界になどに参加する時間を割く余裕などない。だが、父上と母上から、人が善意で招くもの、渡すものは、自分の事情で断ってはいけない、そう諭されたから参加したに過ぎない。それに、小国といえど、ないがしろにしてはいけないという思いもあり、この招待を受けた。しかし、」
彼は言葉を切り、再度周りを見渡す。
ふと、視界の端にリリアーネ嬢が映った。
扉の隙間からこっそりとこちらの様子を覗く彼女の存在に、アレンはあえて気づかないふりをする。
会場全体をぐるりと見渡した彼は最後に、第二王子、ルークの瞳に視線を合わせた。
そして、その顔を射貫くようにして、睨む。
「この国にはとても失望させられた。興味本位で噂に乗じるもの。王族から婚約を破棄されたというだけで陰口を叩く者。……自身の友人が恋人に振られたりするようなことがあれば、その者を慰めるだろうに、な」
先ほど、リリアーネ嬢の噂に花を咲かせていた令嬢たちを順繰りに見回し、一人一人を睨み付ける。
彼女を庇う形になってはいるが、あくまでも、アレンの行動は過ちを犯した小国への説教のようなもの。
ただ単に、この婚約破棄騒動の一件が、この国の問題を浮き彫りにした。
そのため、アレンはそれを指摘した。
ただ、それだけのことだと、自分に対し、ほぼ無意識に言い聞かせる。
それを隠すかのように、アレンは国王と、第二王子を再度睨み付けて、静かに告げる。
「極めつけは、王族の腐敗だ。自身の身勝手な感情で一方的に婚約を破棄し、さっさと別の者に乗り換える。理解不能だ。仮にも、2年間婚約していた相手だ、もっと配慮したやり方があるだろう。一度に発表しなかっただけで十分な配慮をしたつもりか?はっ。それなら今この状況を見てみろ。リリアーネ嬢はお前から一方的に婚約を破棄されたにもかかわらず、まるで彼女が相応しくなかったから婚約を破棄されたような噂を立てられているではないか。理解できないか?それなら貴様の目は節穴だな。とにかく、今日を最後に、フィオはランスとの国交をしばらくの間停止する」
これを書くために前のを読み返したのですが…なんだこの下手な文章w
ちょこちょこ前のセリフを編集しています。。。前のやつも、そのうちしれっと大幅に改稿するかもです( ;∀;)




