第四十八章<過去の決算2>
今週末まで多分更新できません( ;∀;)
ごめんなさい<(_ _)>
私たちが室内へ入り、机を挟んだルーク様の向かい側に腰掛けても、彼はそれに気が付かないようだった。
それどころか、まるで、この場にいない誰かがそこにいるかのように、ブツブツとうわ言を言っていた。
「アメリア…そうだ、俺は優秀で、有能な王太子だ。誰からも尊敬される人格者で…ああ、分かっているよ。すべての元凶はあの女だ。あの、冷たくて、高慢ちきで無駄にプライドが高くて優等生ぶっていて目的のためならどんな手段でも選ばない、悪女だ。そう――自分のプライドのために金を、体をも売ったあの鬼女だ。君ではない。そうだ。君は何も、何も悪くない…」
ガツンッッ!
この上なく静かで、何よりも激しい炎を瞳に宿したアレン様が、ルーク様を殴り飛ばす様子が、ゆっくりと見えた。
時空の流れが歪んだかのように、とても遅い動きだったけれど、それは一瞬の出来事だった。
「っっグハァッッッ!?」
嫌な声を上げながら、ルーク様が吹き飛び、壁に激突した。
みぞおちを抑えてうずくまるルーク様に、アレン様は先ほどと同じように、静かな激怒を瞳に灯しつつ、言葉をかける。
「私の婚約者が何だと言った?高慢ちき?無駄にプライドが高く優等生ぶった女?目的のためならどんな手段でも選ばない悪女?自分のプライドのために、金も体も売った鬼女?――アメリア嬢とは違う?アメリア嬢は何も…何も、悪くない?」
そこまで言い切ると、アレン様はつかつかとルーク様へ近づき、その胸倉をグイっと掴んで無理やり視線を合わせる。
「お前は…あの日から、何も成長していなかったのだな。いや、むしろ退化したというべきか。自身の婚約者の研鑽と実績を理解するどころか、手柄を横取りしていたことすら気がついていなかったとはな。国が滅び、拘束されてなおその意味に気が付かない――気が付こうとしないとは。一度は理解したのだろう?彼女という存在の重要性に。それでも、お前の心が弱すぎたせいで、お前はそれを拒んだ。その結果が、これだ。高慢ちきで無駄にプライドが高いのは、お前の方だ。ルーク元第二王子」
読心を使って、何か読み取ったのだろう。
アレン様の言葉が少し変化した。
しかし、アレン様――怖いな。
彼は殺気を体中から放出しており、無表情で淡々とした口調にもかかわらず、さながら蒼い鬼火を纏っているかのように見える。
だが、そんな恐怖よりも、彼が自分のためにここまで怒り、気持ちを高ぶらせてくれているということに対する喜びの方が大きい。
甚だ疑問である。
何故に強烈なオーラを発しながらルーク様を精神的に追い詰めていくアレン様を見て胸が温かくなるのだろう。
そんな感じで、軽く現実逃避をしていた私だったが、アレン様に殴られたことで意識がこちらに向いてきた様子のルーク様と――目が、合った。合ってしまった。
素早く視線をそらそうかとも思ったが、それではここに来た意味がないと、グッと耐える。
そして無言のまま、まっすぐに彼の目を見据えた。
その状態は、ルーク様の声によって、あっさり破られる。
「――リリ、か?」
ええそうですよ、なんて、死んでも言わない。
どうせならば、彼の言う、“冷たい女”らしい言葉で返してやろうじゃないの。
そんな思いを込めて、私は長い間言いたくてたまらなかった言葉を、口にする。
「愛称で呼ばないでください」




