第四十七章<過去の決算1>
――と、いうわけで。
ルーク様がフィオへ引き渡されていることを思い出した私は、アレン様に付き添われて彼が収容されているという貴人用の牢へと向かっている。
ルーク様のことを想ったことなんて一度もないし、何なら二度と会いたくないと思っていたルーク様に進んで会いに行こうとする理由。
それは、過去の決算をしたいと思ったからだ。
今の私のままでこのままフィオの皇太子妃となったとしても、きっと、ランスの公爵令嬢だった頃の“私”を、いつまでもずるずると引きずってしまうことになる。
それが、嫌だった。
ただそれだけのこと。
まあ私は、そんな“ただそれだけのこと”のために大っ嫌いな相手に合わなきゃならないわけだけどね!
――心から憂鬱なのに、そうしないと前進できそうにないなんて。
私も馬鹿だなあ、と、内心自嘲する。
それでも。
私の横で、私の歩調に合わせてゆっくりと歩いてくれるアレン様がいるから。
私は、前に進もうとすることができているのだと、そう思う。
前に進みたいと思えたのは、私の横にアレン様がいてくれるからなのだと。
それを、知ることができたからこそ、私はアレン様の手をとったのだ。
私は、アレン様に強引に連れてこられたのではない。
私の意志で、ここに、フィオに来たのだと、そう思うことにして。
ルーク様に会う前、私はそんなことを考えていた。
そして、お互いに無言のまま、ついに面会室の扉の前へと到着したとき。
私は無意識に、そっとアレン様の手を握っていた。
頭上から、ひゅっと息を吞む音が聞こえたが、彼はその手を振りほどくことなく、ギュッと握り返してくれた。
大丈夫。大丈夫。
そう、自分に暗示をかける。
ギイィィという音をたてて扉が開く光景は、やけにゆっくりだった。
そして、大きく開け放たれた扉の先に見えたのは――罪人の着るボロ服を身に纏った、かなりやつれた様子の、私の元婚約者――ルーク様の姿だった。
しかも、ボロボロなのは服だけではないようで。
表情からは、いつも浮かべていた、見ていてイライラする笑みが消えており、蒼い瞳は、何の感情も映していなかった。
虚ろで、どこか遠くを見ているような彼に対して抱いた感情は、怒りでも、憐憫でも何でもなく――“無”だった。
あれだけ私をこき下ろし、見下していた相手なのに。
正直、何の感情も湧かないのは意外だったけれど。
私は、私の過去を決算するために、この目の前にいる男と向き合う必要がある。
そう、覚悟を決めて。
私は、ルーク様の待つ面会室へと、足を踏み入れた。
自分にざまあが書けるのか…頑張りますผ(•̀_•́ผ)




