第四十五章<アレン様の私室に連れ込まれました7>
「無理してそんなこと言う必要、少しもないです」
視線を下に下げ、少しばかりキツい口調でそう告げる。
その言葉に、アレン様は目を丸くして、驚いた様子を見せた。私を抱きしめている腕の力が緩む。
私は動揺する彼には構うことなく――アレン様の胸を力一杯押して腕から逃れた後、両手で彼の頬を掴んで視線を無理やり合わせた。
そして。
「傷ついて、当たり前なんです!辛くて、当たり前なんです!自分を殺して、感情に鈍感になることが、貴方の防衛策だったんです!……それを。それを、否定しないでください!貴方が今まで自分を守ってきた方法は、情けないものなんかじゃない!」
そう、一息に叫んだ。
今までのような後悔や、やってしまった感なんてものはない。
これは、言わなければならないことだから。
これを言うのは、他の誰でもない、私の役目なのだから。
絶句して私をまじまじと見つめるアレン様に対し、私はなおも続ける。
「それを…それを溜め込むことが辛いようなら、私にぶちまけて下さいっっ!私だって、貴方様から溜め込むなと言われる前までは、無自覚に色々なものを溜め込んでいました。でも、それは溜め込まなくてはならないって、無言で周りから思われていたからなんですよ?ありのままの私を、出してはダメだからって。…そんな、ありのままの私を受け入れて下さったのは、紛れもない貴方です。それなら、情けないって自己完結するんじゃなくて、私を頼ってください。アレン様が、私を支えてくれたみたいに。私、どんなアレン様でも受け止める覚悟はできてるんですよ?パートナーって、そういうものじゃないんですか?結婚は、喜びを二倍に、苦しみを半分にするって言いますよね。……それこそ、喜びが半減して、苦しみが数倍になるような結婚の例だってあります。私にとってルーク様との婚約がそうでした。あの頃の私は、喜びを二倍にして苦しみが半減するなんて格言、あり得ないって思っていたんです。今だからこそ言えることですが、ルーク様と顔を合わせるたびに不快だったので。……でも私、アレン様とならそれを可能にすることができるのではないかと、そう思っているんです。だから、情けないなんて、言わないで……」
私の想いの全てを一気に吐き出した、言葉たち。どんな反応をされるか、怖いって思いもある。
それでも私は、もう、アレン様から目を逸らしたりはしない。
彼が、私の言葉にどんな感情を抱いたのかが、知りたい。知らなくては、ならない。それを、誰かに言われるまでもなく感じたから。
私はそう身構えて、アレン様を凝視する。
私の瞳に映る彼は……先程以上に驚愕したような表情のままで、泣いて、いた。
その始まりは、私の言葉が終わった一拍後に零れた、一滴の水滴。
その雫が仲間を引き連れて、後から後から溢れていって。
最初、アレン様はその涙に気づかず、無言で目を瞬かせていた。
だけど、やっと自分が涙を零していると理解してから、彼の涙腺は堰を切ったように崩壊する。
私は、両手で顔を覆って慟哭するアレン様の背中を、先程以上に優しく撫でさすっていた――
わ、また遅くなった(´;ω;`)ウッ…
フラグ、回収しちゃいましたね…(-_-;)




