第四十四章<アレン様の私室に連れ込まれました6>
「申し訳、ない…」
ポツリと、私をぎゅうぎゅう抱きしめながら、絞り出すようにして発された呟きは、とても小さくて。
先ほど、アレン様の膨大な負の感情をぶつけられたことも相まって、何となく泣きたくなった。
だが、このタイミングで私が泣けば、変に取られる可能性がある――というか絶対そう取られる。
別に私は、負の感情を押し付けられたことを怒ってるわけではないし、何なら慰めたいとも思っている。
だが、そんなことをしてしまうと、今まで彼が耐えていたのは何だったのだというようなことを思われてしまう可能性もある。それは私が困る。
――だから。
私はアレン様の腕の中で、ゆるゆると首を横に振る。そして――自分の腕を、彼の背中に回した。
よーするに、抱きしめ返しているという構図である。
羞恥とかそういうものは、もちろんある。というか未だに、私の顔に集まった熱は引く様子がないし、なんなら広がっているようにも感じる。
だけど。
こうすることで、アレン様が少しでも楽になるのなら、と。
そう思ったが故に、今私はこうしている。
羞恥心とアレン様の精神的苦痛を天秤にかけた結果、アレン様の精神的苦痛を除くことに傾いた。
ただ、それだけのこと。
それなのに。
「つッッ!?」
……何かアレン様本人は、くぐもった奇声を挙げたのですが。
もしかして、私からされるのは嫌だったのかなーとか、そんな嫌な予感が頭を駆け抜けた。
――と思ったのもつかの間。
先ほどよりも更に強い力で、アレン様は私を締め付けてくる。
……正直、痛い。
でもそれ以上に、私の行動は間違っていなかったことに安堵する。
しばらくの間そんな感じだったのだが、何となく会話できそうな程度には、負の感情からのダメージは回復したため、私からアレン様に話しかけることにした。
「そ、の…さっきのは、アレン様が今までに感じてきた痛みや、苦しみ…という認識でいいのですよね?」
「――ああ」
眉根を寄せて唇を噛む彼は、先程以上に苦しそうで。
思わず、彼の背中をさすってしまった。
それが効いたのか知らないが、彼は固くなった表情を少しだけ緩めてくれた。
そして彼は、精神を落ち着けるためか何なのか、すっかり冷めてしまったラベンダーティーを入れたカップに口を付ける。
そして、ぽつぽつと語り始めた。
「父母を除いた誰からも好かれないという事実を、私は別段、気にしたことはなかった。それが、当たり前だったからな。…だが、どうやら気にしていないと思い込んでいただけだったらしい。貴女に偉そうなことを言っておいて、私も無意識のうちに色々なことを溜め込んでしまっていたのだと。貴女と出会って、一緒に過ごしていくうちに、少しずつ気付いた」
情けないな、とこぼした彼の表情は、分からない。
アレン様が話し始めたタイミングで、頭を彼の胸元に押し付けられ、固定されているからだ。
この体勢、抗議したいのだが、話の内容が内容なだけに、しずらい。
結局、抗議することを諦めた私は、彼の言葉に対する返答をするべく、そのままの体勢で口を開くことにした。
最近、割と高頻度で投稿できているのです\(^_^)/
……これからどうなるのかはわかりませんが。←フラグ?




