第三十九章<アレン様の私室に連れ込まれました1>
スタスタと城のだだっ広い廊下を歩く私とアレン様は、未だに視線を合わせることができていない。
流石に頬へ集まった熱は引いたが、面倒なことに、羞恥心というものは中々引いてくれないためということもあるだろう。
それはアレン様も一緒なようで。
故に私たちの間には、どことなくぎこちない雰囲気が現在進行形で漂っている。
そんな状態がしばらく続いたころ、到着したのはアレン様の部屋だった。
この城に住むようになってまだ二日目なので、実を言うと、どこへエスコートされているのかはさっぱりわからなかったのだが。
というかそれを言うならエスコートされてここに連れてこられた理由も不明なのだが。
まあ、あれは何となくあの場の雰囲気にお互い流されたという感じなので、不可抗力だった。そう思っておくことにする。
さほど重要でもないことならば、起こったことに対していちいち疑問を持つのは馬鹿らしい――というか時間の無駄である。
「適当に座っておいてくれ」
私のそんな思考は、アレン様からの一言で、一瞬にして消えた。
その言葉に頷きつつ、私はとりあえず一番近くにあったソファーに腰掛けた。
一方のアレン様は、部屋の端に置いてあった茶器でお茶を淹れ始めた。
――え、侍女呼ばないの?
いや、待て。侍女に頼りすぎるのはよろしくない。でも、彼に淹れさせるのはもっとよろしくない。それなら自分で淹れる。
故に、私は少しばかり焦った声を発する。
「え、あ、あの、お茶なら私が…」
そう、止めかけたのだが。
彼はこちらを振り返り、一言。
「…茶くらい、私でも淹れられる」
そう言って、そのまま自分で一連の作業を終わらせてしまった。
時折魔法を交えつつ、ゆっくりと茶を淹れるその動作は手慣れており、思わずまじまじと見つめてしまった。
それは向こうもとっくに気付いていたようで。
作業がひと段落した段階で、私に話しかけてきた。
「…やはり、変か?」
「何がですか?」
何故こんなに手慣れているのかということに関しては疑問を感じなくもないが、変な点はこれっぽっちも見当たらない。
しかしながら、彼はこの言葉に意表を突かれたような表情を見せた。そして、呟くようにして、次の言葉を発する。
「男が、茶を淹れたりすることは、変だとか思ったりは…していないようだな」
「いや、こんな中途半端なタイミングで心読まなくても、最初から読めばいいじゃないですか」
どうしていつもこんなタイミングで心を読んでくるのかわからないが…まあ、別に気にすることではない。
そう思って、このことは気にしないことにしたが、アレン様は小声でその疑問に答えた。
「できる限り、相手の気持ちは言葉で聞くようにしているからだ。いくら言いたいことや情報が共有できるとしても、言葉を交わすことの重要性を無下にすることはできないから、な。…まあ、すぐに忘れて心を読んでしまうのだが」
自嘲気味に発された彼の言葉に。
私は、どう反応すれば良いのかわからなかった。
えー、お久しぶりです。
そろそろ更新速度を上げたい…できれば…その…
頑張ります。




