第三十八章<動揺>
で、え、と、を、し、た、い?しかも私と!?
気が付けば、アレン様のその言葉だけが頭の中でぐるぐると回っていた。
おそらく今の私の表情は、ひどい間抜け面になっているだろう。
しかし、そんなことを気にすることができない程度には、私は混乱していた。
だから、だろうか。
口から、こんな言葉がこぼれてしまったのは、
「アレン様…熱はありませんか?」
更に、アレン様が絶句し、お義母様が必死で笑いをこらえているのをいいことに、彼の額へ手を伸ばしてしまったのは。
――気が付いたときには、もう遅かった。
私の手は、形のいいアレン様の額に触れていた。
「「…………」」
これ…どうしよう。
そう思っているのはアレン様も一緒なようで。
お互いに硬直して動けないまま、時間は流れていった。
お義母様に助けを求めようかとも思ったが、その時にはもう彼女はどこかへ消えていた。(馬ごと)
しかし、何事にも限界というものはあるわけで。
アレン様はかなりの高身長でいらっしゃる。私の身長は女性としては高めではあるが、軽く背伸びをしなければ私の手が彼の額には届かない程度に、彼の身長は高い。
もしくは、アレン様にしゃがんでもらうか。
現在は私から触ったため、私がつま先立ちをしている。
それが大分苦しくなってきた。
――いや、そんな物理的な苦しさもさることながら、実を言うとこの沈黙の方が苦しかったりする。
書庫に流れる穏やかな沈黙はともかく、こんなアクシデントが起こっている最中の沈黙は辛い。
ちょっと耐え切れなさそうだったので、ほとんど呟くように、
「熱…なさそうですね」
と、口にした。
「まあ、な…」
と。アレン様も、私と同じようなぼそぼそとした口調で言葉を返す。
おずおずと手を額からのけると、何故かその手を掴まれた。
剣を握る大きな手はところどころタコができていたけれど、包み込むように暖かくて優し――じゃなくて!
どうしたのアレン様!?やっぱり熱あるんじゃない!?
熱なくても絶対疲れてるでしょ!
顔に集まった熱を誤魔化すように、私は叫ぶ。
「あ、アレン様!ねねね熱はないようですが、やっぱり少し疲れていらっしゃるのですね!わかりました!少し休みましょう少し!」
「…ああ」
少しばかり残念そうな声色で肯定される。
何故かは知らないけれど、無性に羞恥がこみ上げてきたので、彼の顔を見ることはしなかった。
だから、私は知らない。
アレン様はその時、声色だけでなく表情にも残念そうな色が滲んでいたことを。
そして、アレン様はゆっくりと表情を元に戻し、私の腰に手を伸ばす。
疲れている人にエスコートしてもらっても良いのかとも思ったが、これ以上思考の種が増えるのは面倒なので、良いことにしておく。
何かあれば、その時に対処すればいい。
そして、私とアレン様は歩き出した。
どこかでアレン視点を入れたいのですが…
いつ入れよう(-_-;)




