第三十四章<お義母様とデート3>
「どういう、こと、ですか…?」
たっぷり数秒後。目を見開き、やっとのことで絞り出した言葉は、ひどく震えてしまった。
さらりと発せられたはずの言葉が、その口調に似合わない質量を持っていたから。
「正確に言うと、少しだけ違うわね」
艶やかな、赤みを帯びた金髪を風になびかせ、お義母様はゆっくりと語りだす。
「アレン。あの子は、テレパシーを持って生を受けた。それはもちろん喜ぶべきことだし、実際、皆に歓迎されたのだけど…当然、畏怖や攻撃の分かりやすい対象にもなったのよね。」
「それは…」
確かに、貴族が魔法を持つこの世界でも、テレパシーというのは極めて希少であり、最も研究が進んでいない魔法だ。まあ、フィオの王族の極一部しか継がない魔法なのだから、当然と言えば当然なのだけど。
研究というものには、どうしても実験という工程が不可欠なのだ。もちろん、実験というのは、人体に害のない、危険性が限りなく低いものだけど、それでも、国々をまとめ上げているこの国の王、皇太子を実験と名の付くものへ駆り出すことはなかなか難しい。
そのような理由で、研究が進まないテレパシー。この魔法は、人の心を読むという、他人にも、自分にも多大な精神的負担のかかるものだ。そのため、過去には耐え切れずに自殺してしまった者もいると聞く。
逆に言えば、それを耐えきることができた者こそ、フィオの王冠を継ぐ器を持つ、ということでもある。
つまるところ、フィオの王族は、テレパシーを身に宿し、さらにそれを耐えきれるかということが大きな試金石になるそう。
「アレンは、テレパシーに耐えきることはできた。…でも、その代償に、自分の心を閉ざしてしまった」
まるで、独り言のように。
お義母様は、そう、言った。
「好きって言われたことがないだけじゃなくてね。まだテレパシーの制御が効かない頃…それこそ、物心つく前から、周りの人間の多くが、自分をちやほやしているくせをして、常に自分の能力を怖がって、嫌悪感すら抱いている者すらいるってことを、知ってしまったの。」
人の悪意ある思考については、成長するにつれて、徐々に学んでいくべきものだ。
それを、アレン様は。歴代の、フィオの国王たちは。
幼い頃から突き付けられ、押し付けられてきたのだ。
昔は、フィオの国王となる者には、それに耐え得る器がないとダメだと、ごく自然に考えていた。
それが、当たり前だと。
そう、思っていた。
でも。
彼らだって、人間なのに。
怒るし、悲しむし、傷付きもする、人間なのに。
アレン様のことを知って、お義母様と会話して。やっとそのことに気付いた。
このことを知って、私はどうすべきなのだろう。
私は、何ができるんだろう。
私は、どうしたらいいのだろう。
私は――
テレパシーという魔法は、制御できても中々大変なようで( ・ε・)
(書きながら話を考えてるので、読み返すと、大変ですね~みたいなかんじで他人事になることがあります(笑))




