第三十二章<お義母様とデート1>
「リリアーネちゃーん、こっちこっち!きれいな泉が湧いてるから、ここでいったん休憩しましょう!」
「はい、すぐ行きます!」
お義母様のよく通る声に対し、負けじと元気な声で返事を返した私だったが…
そもそもどうして、私とフィオ王妃こと私の義母が、こんな所でこんな会話をしているのだろうか。
現在、私とお義母様とは、フィオの城門の外、すなわち、国境である森の中にいる。
ついでに言うならば、馬もいる。というか馬に乗ってきている。
しかし、この状況。ツッコミどころが満載、否。ツッコむところしかない状態なのだが。
事の始まりは、数時間前。
さあ、今日から王妃教育スタート!
と、珍しくかなりの気合を入れて向かったお義母様の宮殿では、お義母様が待っていた。乗馬服を着て。
昨日も見たことは見たのだが、それにしても乗馬服は予想外過ぎた。そのため、本日、お義母様へ私が発した第一声は「熱ありますか?」などというものだった。不覚。
まあ、お義母様爆笑してたからいいけど。いいけども。
その後私も乗馬服に着替えさせられて馬に乗せられて城門の外まで連れていかれるって!
「想定外の極致ですよねこれ!」
あ、しまった。最後だけ口に出しちゃった。
しかしお義母様は、
「まあ、そうよね~」
と、笑顔で流してくる。
「いや、許して下さるのはいいけど、もうちょっと分かりやすく!分かりやすいリアクション願いします!わざと分かりずらくしてるんだったら、せめて家族の前だけは止めて!わざとじゃないんなら、フィオの皇族って、言わんとすることが分かりにくく口から出てくる家系なんですか?」
辛うじて敬語ではあったけれど、思考がどんどん言語化されていく。案の定、お義母様はツボにはまってしまったようで、中々笑い止んでくれない。
昨日、思考をため込むな。ため込まないで、むしろ出してくれた方が国の利益になるから、と言ってもらったので、思考を口に出す練習をしてみているのだが、これはこれで心臓に悪い。
いくら誰も怒らないからといっても、悪いものは悪い。
ゆっくり慣れていくしかないかと思うが、それなら感情を表に出すなと言われ続けたあの教育は何だったのだろうとも思う。その使い分けは、また後でお義母様へ尋ねるとして。
そんな会話をしながらも、私たちは、お義母様が言った方向へと馬を進めている。
ちなみに、城を出た直後に、並んで馬を走らせながらどうしてこういうことをしているのかを問えば、堅苦しい王妃教育の前に、親睦を深めるため、将来の母子でデートしよう!というような内容の答えが返ってきた。
デートとは正確に言えば、恋人が出かけることだと呟けば、いいの!それなら私が男役をやるわ!という返事が返ってきたため、それ以上は何も言わないことにした。
そしてふと、勝手に国外へと出かけてもいいのかと思ったが、相手はこの義母だ。この国の頂点に君臨するお方である。
ついでに、今日が担当であったと思しき、城門の見張りをしていた衛兵二人も、あきらめたような顔で溜息を吐きながら、何も言わずに門を開けていた。
おそらく、過去に何度もこういうことをしてきたのだろう。
なかなかに破天荒な義母だが、こうなればもう、ついて行くしかない。
衛兵たちと同じように溜息を吐きつつ、私は馬に、速度を上げるよう、促した。
お久しぶりです!そしてお待たせ致しましたm(_ _"m)
ざまあは…今しばらくお待ちくださいませ。




