表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/72

第二十九章<ルークは惑う2>

 俺は、大臣が部屋を出てしばらくたった今もなお、放心していた。

あの、いつも俺に嫌味ばかり言ってきて、なんの努力もしていないくせに、勉強でもスポーツでも、俺よりも成績が良かった女。

どうせ教師陣に賄賂を渡したか、色目でも使っていたのだと思っていた。

出るところが少しも出ていない、子どものような体型。そのくせ、女として異様な程の筋肉量。

スレンダー、とかいったか。

微塵も俺の好みではなかったが、マニアックな教師(ヤツ)にはウケていたようだったから。

高慢ちきな女だったから、その分無駄にプライドが高かった。

成績を取るためなら破廉恥なことでも何でもするのだと。 

そう、思っていた。思っていたのに。

否。

そう、思いたかったのだ。

そんな考えが浮かんだ瞬間、俺は酷い頭痛に襲われた。

彼女との思い出が、次々と思い浮かんでは、消えてゆく。

デビュタントの際の、凛然とした面持ち。

母上からの厳しい王妃教育に、さも当然というようについていく姿。

裁判中に逆上し、偶々近くに座っていた俺に向かって襲い掛かってきた男の。

みぞおちに拳を叩き込み、気絶させたのだ。

俺を含めた誰もが、例外なく狼狽し、咄嗟に動くことができない状況下で。

リリアーネは、動いたのだ。俺を、守るために。

嗚呼、そうだ。

ただの優等生ぶった高慢な女が、こんなことができるわけがない。彼女は正真正銘、優秀だったのだ。

やっと。

やっと、理解することができたのに。彼女は、もういない。

フィオの王太子である、アレン様が。連れ帰ってしまった。今ならもう、理解できる。彼が母国へ連れ帰るほど、彼女は優秀だったのだ。

あの、屈辱的な社交界で、激昂した彼女がまくし立てた、不敬でしかない言葉は。二年間も、不当な扱いを受け続け、耐え続けた彼女が。耐えられなくなった。ただ、それだけなのだと。

理解はできても。

長年にわたって彼女を下だと思い続けていた俺は。その事実を、受け入れられない。

どうすればいい?どうすれば、全てを取り返せる?

そう、自問しても答えが出ないから。

あの、女のせいにする。

リリアーネという名の悪女が、この国を傾けたのだと。ねじ曲がった方向に、思考を誘導する。

自分でも、わかっている。

僅かに残った良心が、お前のせいだと否定し続けている。それでも。俺は、それに抗うことのできない、弱い人間だから。全て、彼女のせいだと思い込むことにする。自分で自分に、暗示をかける。それが、真綿で首を締める行為だと、知りながら。膨れ上がった自信と、妄想と、嘲りと、プライドを。消してしまうよりも、楽な方に。

逃げる。

「殿下、大変です!」

突如として、一人の臣下が部屋に入ってくる。

「何だ、騒々しい。」

我に返った俺は、苛立ちを隠すことなく、言葉を返す。

「国境が破られました!」

「…は?」

噓だ、ありえない。

まさか、宣戦布告をしてからだいぶたっているのか?

そこまで、状況は悪化しているのか?

全て、遅いとでも言うのか?

のしかかる重圧に耐え切れず、部屋を飛び出した。

向かった先は、愛しいアメリアの部屋だ。

彼女ならば、俺を慰め、良い解決策を考え出してくれるはず。

そんな期待を込め、彼女の部屋の扉を、勢いよく開け放った。


その部屋に、アメリアはいた。

しかし、いたのは、アメリアだけではなかった。


知らない、男が。

アメリアの、ベッド、の上、で。アメリア、に。のしかかって、いて。くち、びるを。あわ、せ。合わせ。

二人のふく、が。

そこ、ら中に、散らばって。ふく、が、あ。


「きゃあああああーっっっ!?」

絹を裂くような悲鳴が聞こえた。

アメリアの声だった。

アメリアの上にのしかかっていた男は、顔を真っ赤にして、いつの間にか、俺の胸ぐらを掴んでいた。

そして、

「お前が、このアメリアを無理に手籠めにしたっていう変態か!?」

などと。

そんなことを、ぬかした。

馬鹿な、逆だろうと、罵倒してやりたい。

だが、金縛りにでもあったかのように、どこも、動かせない。

気が付けば、頬が熱い。

じんじんとした焼けるような痛みに、一足遅れて自身の頬を張り倒されたことに気が付いた。

何が、どうなっているっっ!?

体にガウンを巻き付けたアメリアが、いつの間にか俺に近づき、告げる。囁く。

「あーあ。折角、運命の王子様を見つけたと思っていたのに、婚約者なしじゃあなぁんにもできないポンコツだなんてね。残念だわ。ああ、彼が誰だか知りたいわよね?彼はジャコモ。アタシの元カレ。隣国の子爵の三男だったんだけど、アナタの方が顔も好みだし、身分も高かったから、振ったのよね。でも、彼、アタシにぞっこんだったのよね。ちょっと前までは鬱陶しいだけだったけど、王太子妃になれないっぽいから、利用することにしたの。だから、アタシが彼を振ったのは、アナタのせいだってことにしたのよね。それだけ。じゃね、あ、アナタのテクニック、まあまあイイ線行ってたわよ?没落しても、どっかのご婦人の男妾くらいにはなれるかもね?」

アメリア。噓、だろう?信じていた、のに。信じ、て。

目の前にいる男が、また、拳を振り上げる。

「うわあああああああ!!!」

叫び声を上げ、俺は転がるように部屋を飛び出した。

そして。

更新が滞ってしまい、大変申し訳ございませんm(_ _"m)

不定期更新ではありますが、大体一週間に一話を目安にしていきたいと考えています。

今後、投稿できないときは後書きに書き足すことにしました。

ご了承ください。

あ、アメリアのざまあもちゃんと書きますので、ご安心ください( ̄ー ̄)ニヤリ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ