第二十七章<夜会7>
そして、軽やかで明るい、ワルツが流れ出した。
会場に響く音に合わせて、皆がステップを踏み始める。
もちろん、私もその一人だ。
しかし、今までの夜会とは違うことが一つ。
言うまでもなく、アレン様が私をリードしてくれることだ。
しかも、彼は一つ一つの動作が丁寧で、よどみがない。
そして、常に、自然かつ優しく動いてくれるため、私も踊りやすい。
一言で言えば、ダンスがとても上手いのだ。
いつも、ド下手な婚約者をリードしてやる側だったから、とても新鮮だった。
そして何より、
楽しい。
ダンスを踊るとき、こんなことを思ったのは、初めてだった。
高揚感、とでも言えば良いのだろうか。
十分すぎるほどに練習して、踊り慣れているはずのステップが、まるで初めて踏むかのような。
そんな、錯覚にも似た感情を味わって。
この時間が、いつまで続いたらいいのに、なんて。
柄にもないことを考えたりして。
気が付けば、音楽が鳴り止んでいた。
名残惜しい気持ちを抱えながらも、規則通り、腰を折って頭を下げる。
ちらりと顔を上げると、何か言いたげに眉をひそめて、私を見つめていたアレン様と。
視線が、交差した。
何となく、お互いに沈黙が流れる。
「…どうか、されましたか?」
一拍後、そう、尋ねたら。
「もう一曲、踊ってもらえない、だろうか?」
そんな、答えが返ってきた。
「いいんですか?」
自分でも、声が弾んだことがわかる。
楽しかったことは事実だが、正直、ここまで大げさに反応するとは、私も思わなかった。
アレン様も、目を丸くしている。
そして、照れたように、少しだけ微笑んだ。
途端に、私が反応するよりも早く、周りがざわついた。
なんでも、
「い、今の見たか…?」
「あ、ああ。俺の勘違いかと思ったが…」
「殿下が微笑まれるなんて…」
とまあこのような単語が飛び交っていた。
アレン様、そこまで笑わない方だったのですね。
しかし、そこで小さな疑問が生じた。
アレン様は、私の前では割と笑うのかしら?
よくよく考えてみれば、私は、アレン様と初めて会った日も、家に送ってもらう最中に馬車内で笑いかけられているのだ。
当初こそ驚いていたものの、フィオへの道中で慣れてしまい、ランスに届いていた噂は、大分盛られたものだと思っていたのですが。
貴族たちからの反応から、噂が正しかったことが判明した。
しかし、こうなると。
彼が私に向かって笑いかけてくる理由がさっぱりわからない。
思わずそのことについて考えこみかけてしまったが、折角アレン様ともう一曲踊れるのだから、と、やや強引に思考を切り替えた。
そして、軽快な曲調の二曲目に合わせて、踊りだす。
それを踊り終えた後、お義父さまとお義母さまから、改めてアレン様の婚約者として紹介していただいた。
意外にも、ある程度覚悟していた悪口は聞こえず、むしろ、
「やっと婚約者が固定した、めでたい!」
という感じの空気があって…
少々、いたたまれなかった。
その後も、アレン様と何曲か踊ることもでき、考えていたよりもずっと楽しい夜会になった。
その頃、ランスでは。
次回より、ざまあを予定しております!!!
やっとざまあが書けるーーー!!!




