第二十一章<夜会>
私は現在、王宮の上級メイドを総動員して身支度を受けている。
私自身はそこまでこだわるタイプではないのだが、彼女らから、
「化粧をしていなくてもここまで美しい女性を着飾らないなんて、信じられません!たとえどれほど抵抗されても、私たちはやりとげててみせますからね!」
と物凄い勢いで反論されてしまい。
結局、すみれ色を主に、純白のレースをふんだんにあしらったドレスに、アンナの魔法にて作成された、髪の片側を花弁がこれでもかというほど細かい花の形に結い上げ、片側に絶妙な緩さのウェーブをかけるという、この前の社交界の比ではない完全武装をさせられた。
実家から連れてきたアンナが、王宮の上級メイドたちと打ち解けたのは喜ばしいが、その内容が私の聞いた限りでは、私は着飾ることに対する興味がなさすぎるため、自分たちが団結して私を飾り立てるのだ!的なものだったのだが。
本気で今後が怖い。
更にはお義母様まで覗きにきて、アンナを始め、メイドたちを労っていた。
その会話の中に、
「リリアーネちゃんは今でも光ってるけど、磨き上げたらすごいことになる逸材だから、アレンを手早く落とさせるためにも、これからも飾りまくってね!」
という不可解かつ聞いてもいたずらに困惑するような内容があったのは、気のせいに違いない。そう思っていた方が安全だ。
まあ、そんなことは置いておいて。
支度ができた私は、三十分前から律儀にドアの向こうで待っているアレン様と一緒に、さっさと広間へ移動することにした。
そうしようとしたのですが。
お待たせしました。と言って部屋から出てきた私を見て、何気なく振り向いた状態のまま固まっていらっしゃるのは何故だろう。
「あの~、アレン様?」
一分後、しびれを切らして尋ねれば、彼は、ひゅっと瞠目した後、
「すごく、綺麗…だな。」
ということを。聞き間違いでなければ、そう言った。
「…本気で言ってます?」
これは嫌味でも、甘える技術の一つでも、何でもない。
本気で、そう思ったのだ。
だって。ルーク様は、そんなこと、一言も言ってくれたことはなかったから。
でも。目の前にいるアレン様は。
顔をほんのり赤く染めながら、
「…ああ。本心だ。」
と。
そう、言ってくれた。
ああ。また、泣いてしまいそうだ。
口下手ではあるけれど、こんなにも、私を気遣ってくれる人がいるなんて。
わかりにくいこともあるけど、こんなにも、私を喜ばせてくれる人がいるなんて。
絶対に、離れたくない。
早くお妃教育を終了させて、彼の隣に立っても胸を張れるような。
そんな資格を、勝ち取りたい。否、勝ち取ってみせる。
そんな新たな決意を胸に。
私は、アレン様にエスコートされながら、初めての「お役目」を果たす夜会へと。
進んでいった。
次回、毒舌炸裂編(仮)です!




