第十八章<笑いと、涙2>
「ふふふ。アレンも成長したものねえ。完全な女嫌いで通っていて、妃を迎えられないんじゃないかとまで噂された挙句、アレンの後継者を今存命の王族から探すべきだと進言してくるような貴族までいたのに、女の子の心の傷を見抜いて、癒してあげようとするなんてねぇ~。」
「ああ。「リリアーネ殿が傷心のようなのだが、自分ではその気持ちを理解できても癒すことができないので、不本意だが協力してくれ」と書かれたアレンからの手紙を見たときは、椅子から転げ落ちるかと思ったぞ。」
え?アレン様、そんなことをして下さったの?
「あ、あのアレン様が?」
しまった。声に出ていた。
「うふふ。ねえ、アレン?愛しの婚約者ちゃんからそんなことを言われるようでどうするの?ほら、こそこそしないでグイグイいっちゃいなさい。グイグイ。」
「・・・」
明後日の方向を向いて黙り込んでしまったアレン様。
…ちょっとかわいいかも。「愛しの」は冗談としても。
それでも、彼が自分のことを思って行動してくれたことが思いの外嬉しく、思わずニコッと笑ってしまった。
それを横目で見たアレン様は、何故かその身体をひねったやや辛そうな状態のまま、固まってしまった。王様と、王妃様まで絶句している。瞬きのみ、普段よりも活発になっている。
「…あの、どうされましたか?」
いたたまれず、そう尋ねると。一番に答えたのは、否、呟いたのは、アレン様だった。
「可愛い…」
今、何て言ったんですか?
「…え、えーっと、聞き間違えてしまったので、もう一度お願いできますでしょうか?」
この時点でアレン様は正気に戻ったようで、ボソッと、
「…嫌だ」
と、バッサリ断られた。
ではさっきのは本当は何を言ったのかと首をひねっていると、王様と王妃様がまたもや笑い出した。
…このパターン、いつまで続くのかしら。
「…ふ、ふふ。ごめんなさいね。いや、アレンが女性相手に可愛いだなんて…ふふふ。いや、本当にびっくりするくらい可愛らしかったけど…にしても、世界の終わりかと思ったわよ。」
「母上。今すぐその記憶を消してください。」
「あら?リリアーネちゃんはいいのかしら?」
「…彼女は…いい、です。」
「よく言ったアレン!その一言で関係は一歩前進するぞ。」
…あの、私抜きで盛り上がってるんですけど。そして話についていけてないんですけど。
「…可愛いって、本当に…言ったん、ですか?アレン様?」
「…言った。」
今度こそ思考が停止した。そんなこと、社交辞令以外では言われたことなんか、ないのに。
ぽろっ。
あ、ら。
ぽろぽろ。
ああ。まただ。
こんな風に、温かい言葉をかけてもらったら。嬉しすぎて、笑う前に、泣いてしまう。
凍てついたモノが溶けていくときのように。
そうしたら。王妃様が、ギュッと抱きしめてくれた。
「大丈夫。ここには貴女を傷つけるような人はいない。いたら切り捨てる。だから、安心して。ルークに関しても、追って沙汰を下すから。」
「…な、なんか安心できない単語があったような気がするのですが…」
「気のせいよ。気にしないで、今は思いっきり泣いちゃいなさい。」
少々不安に思いながらではあったが、王妃様のお言葉に甘えて、彼女の腕の中で私はしばらくの間、ひたすらに泣いていた。
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