第十七章<笑いと、涙>
私が、王様&王妃様の面前で毒舌を披露してからちょうど一分経った。が、未だに誰も微動だにしない。
かなり高確率で、私、消されるのでは?
と、思っていたのだが、彼らが取った行動は、私が想像を遥かに凌駕する奇行と取れるものだった。
彼らは、
「あ…アハハハハハハハ!」
「ふ…フハハハハハハハ!」
と、笑い出したのだ。
「え…?」
何故この状況で笑うのだろう。どう考えたって、良くて怒り散らす。普通に考えて追放。悪くて反逆罪で逮捕。最悪で引き回しの上断頭台行き。と、考えるのが妥当なところだ。それなのに、何故。
ひたすらに困惑している私とまだ笑いの波が引かない王様、何を考えているのかわからないアレン様をよそに、王妃様はニコニコ笑って私に話しかける。
「ふふ、こぉんなに面白いことに行き会ったのは久しぶりよ。ありがとね~リリアーネちゃん。」
「え、あ、はあ。」
思考がフリーズしかけているため、こんな中途半端な言葉しか返せない。
「うむ。その通りだ。」
ようやく波が引いてきたらしい王様が、王妃様の言葉に同意する。
だが、私としては二人が笑えば笑うほど、脳内が「?」で埋め尽くされていくだけだ。
何故、笑っているの?
どうしても、理解できない。
「あの…何故?」
気が付けば、口にしていた。
二人共、キョトンとして私を見ている。
「何故、無礼と思われても…というか無礼以外の何でもない発言を…面白がって、下さるのですか?」
「え?だってそうでしょ?私たちにここまで本音をぶつけてくれた他人って、なかなかいないもの。」
至極当然。そんな風に、言ってくれる人は、初めてだ。
王様も思うところがあるようで、ふんふんと頷いている。そして、
「ああ。そうだな。私等をよく知らないまま近付く貴族たちは、半分は怯えていて、半分はゴマすりをするような者たちしかいないからな。リリアーネ殿のように、本音をぶつけてくれるほうがこちらもやりやすい。」
などとのたまう。
うっわあ。すっごい辛辣。口調はとことん軽いけど、内容が怖い怖い。この二人を敵に回すような人、いないとは思うけど、いたら馬鹿以外の何物でもないわね。
とか思いつつ、口を開いた王妃様からの言葉を待つ。
「ねえ、リリアーネちゃん。いいのよ。無理に我慢しなくて。」
え?
その言葉で、ずっと感じていた不満の正体を思い出した。
そうだ。私はずっと、溜め込んでいた負の気持ちを、持て余していたんだ。人に言えば、その人も、自分自身をも傷つけると知っていたから。ずっとずっと。言えていなかった。溜め込んだ気持ちも、それを溜め込むことで生まれたどす黒い感情も、全部。誰にも、言わずに。
「失礼になるとか、そういうこと、一切考えなくていいから。思ってることを全部出せとは言わないけど、吐き出したっていいのよ。」
どうして、そこまで、わかるのですか?私だって、忘れていたのに。
「うふふ。ねえ、アレン?貴方の魔法、なかなかに役に立ったわ。」
アレン、様?彼が、何かしたのだろうか。
アレン様の方を見れば、何やら王妃様に恨めし気な視線を送っている。
「母上、それは言わない約束では…」
「あら、ごめんなさいね。つい、口が滑っちゃったのよ~」
笑顔で謝罪する王妃様。
「完璧に確信犯ですよね?」
「いいじゃない。にしてもテレパシーって便利ねぇ。こんなことにも使えるなんて。」
なんとなく状況を察し始めた私は、思い切って発言する。
「あ、あの…まさか、私自身も自覚していなかった感情をアレン様が察して下さり、ここまで誘導して下さったということですか!?」
「ええ。そうよ。」
簡単に肯定してくる王妃様。だが、その言葉のおかげで、私の脳内は新たなる「?」で埋め尽くされようとしていた。。。
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