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第十二章<旅の途中で>

 ルミナス公爵邸うちを出発してから、三時間程経っている。アレン様と私は並んで座っているわけだけど、お互い反対の方向を向いている。そして、会話もない。

勘違いしないでほしいのは、決してアレン様と私の仲が悪いわけでも、この三時間の間に喧嘩をしたわけでも、ましてや私が毒舌をかましてアレン様を怒らせたわけでもないことだ。

ただ、お互い積極的に友人と遊ぶことはしないわ、恋愛経験がないわ、婚約者又は婚約者候補との関係は上手くいったことがないという三拍子が標準なため、どうしたらいいのかわからないのだ。

だが、気まずいものは気まずい。

チラッと彼の方を見ると、同じように向こうもこちらをおそるおそるというように見ていたため、お互い、慌てて別のほうを向く。フィオに着くまでこのままなのだろうか。あと三日程かかるのに?考えただけで気が滅入る。

はあ、どうしたものかと溜息をついたところで、景色が変わった。薄暗く、動物の姿も見えなかった、城壁を囲む森を抜け、広い草原に出たのだ。見渡せば、木もちらほらと立っている。

そして何よりも私の気を引いたのは、一面に咲き乱れた花々だった。シロツメクサ、タンポポ。スミレにハルジオン。

それらは、王室の中庭では雑草として摘み取られてしまうようなものだったけれど、こうしてみると、とても愛らしく、可憐で、王室に咲く花よりも、ずっと私を癒してくれた。

それで、思わず

「わあっ。綺麗…」

と、呟いていたようだ。毒舌よりはましだろうけれど、ちょっと子供っぽいですよね…

赤くなった顔を見られないように、額を窓に押し付けるようにして顔を隠した。

それなのに、

「ああ。綺麗だな。」

アレン様が、そう言って後ろから窓を覗き込むように、した。

それだけで、とても、嬉しくて。

同意してくれただけで、こんなにも嬉しいなんて。

少しほっこりとしたのもつかの間。私はあることに気付いた。

今、二人で景色を眺めている窓は、それほど広くはない。そして、現在、私の後ろには何かが密着している。

私は、やっと、私はアレン様と窓に挟まれている=アレン様と密着している、ということに気付いた。

叫び声を上げかけるのを、鋼の理性で飲み込んで、

「えーっと、アレン様?何故私に密着しているのでしょう?」

と、やや上ずった声で尋ねた。尋ねたのだが、

「リリアーネ嬢、貴女は私の婚約者候補だ。それならば、別に問題ないのではないか?」

と、しれっとした顔で爆弾を投下してきた。

あるあるあるある。ありまくりです、アレン様。

「えーっと、なんですよね?ならば、私が婚約者になれなかった場合は…」

候補を強調して言いかけた言葉は、アレン様にさえぎられた。

「フィオに着いたらすぐに婚約届を出すつもりだが?」

は?

「ルミナス公爵からのサインはもうもらっている。」

初耳です。

「というわけで、貴女がフィオで犯罪でも起こさない限り、婚約破棄はあり得ない。だから問題ない。」

強引に押し切られる形となってしまったが、まあ、いいことにしておく。そのほうが安全だ。

「わ、わかりました。」

振り向いて、降参する。するとアレン様は、笑っていた。それは、とても愛おしそうな、優しい、笑みで。

トクンッ。

心臓が、そんな音を立てた。鼓動も一気に上がり、制御が効かなくなる。

どうしようもなさそうなので、放置することにした。

そういうわけで、さっきとは打って変わった心地良い静寂に包まれながら、(私はアレン様と窓に挟まれながら)私たちは外の景色を楽しむことができた。

凄くほのぼのしてる…いいなあ。でも、何かタイトル詐欺みたいですね。毒舌をもっと出して、作者のストレス(恋愛ものを読んでいる時、強気なライバルに嫌味とか悪口とか嫌がらせとかされてるのに反論も仕返しもしないヒロインに逆にイライラした時に溜まるもの。要するに私怨)を晴らしたいです。。。

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